ケガ後のトレーニングの仕方

「ケガはよくなったけど筋力が衰えてしまった」
「復帰に向けて何からトレーニングしたらいいんだろう?」

このような方にトレーニングの進め方と、トレーニングに役立つ筋肉の質について書いていきます。

僕はヨガインストラクター、解剖学の講義をしています。
トレーニングやリハビリするとき、筋肉の傾向を知っておくと役に立ちます。トレーニングのバリエーションが増えますよ。

ケガや手術をすると、安静にする期間が必要です。
安静が長くなるほど、筋力や体力は衰えます。
個人差はありますが、体も硬くなってしまいます。

筋力が落ちても比較的簡単に、あとから筋力をつけることはできます。

後々問題になるのは「深部で硬くなり、働かなくなってしまった筋肉をどうやって呼び起こしていくか」

病院でのリハビリが終わった後もまだ、関節が硬くてリハビリを必要とする人は多いです。
ケガの後に調子が戻らないと感じている人は、おそらく硬くなってしまった筋肉や筋膜が戻りきっていないはずです。

僕自身も脛骨と腓骨(ふくらはぎにある骨)を骨折したことがありますが、安静後はとても足が細くなって、関節も硬くなりました。
ですが、時間をかけて丁寧にトレーニングしました。今では問題なく運動できています。

では、ケガ後筋力が衰えた時どんなトレーニングから始めたらいいのでしょうか?

体の硬さ、関節の硬さがある…遅筋線維をトレーニング

筋肉は、大きく分けると「速筋線維」と「遅筋線維」があります。

同じ筋肉の中に、この2つの筋繊維が混ざり合っています。この2つが連携して私たちは運動できています。

同じ筋繊維ですがそれぞれ特徴と鍛え方が違います。

ケガのあと、ほとんどの人は体が硬くなったと感じるはずです。
そんな時は遅筋線維に対してのトレーニングを優先します。

遅筋線維は体を支えるために働くのが得意です。

3つの方法をご紹介。

 

1. ゆっくりした運動からはじめる

硬いまま強い負荷のトレーニングを行うと、体を痛めやすいです。
オススメは
ゆっくりと動くようなトレーニングか、
大きな動きのないトレーニングから始めます。

太極拳やヨガ、ウォーキングなどが適しています。

関節を支える筋肉を刺激して、体の安定を作りながらトレーニングを進めていけます。

安定を感じると、人の体は緩む傾向にあるので、柔軟性もアップしやすくなるというおまけつき。

 

2. 硬い筋肉はストレッチ、マッサージをして柔軟性をアップ

硬さがあるということは、筋肉を使うための体の土台が動かないということ。土台が動かないと筋力はつきにくい。(あたりまえですが)
硬いままトレーニングをすると、偏って筋肉がついてしまうかもしれません。それも避けたい。
もしかすると、さらに硬くなってしまうこともあります。

特に体の深部が硬くなりやすいです。

硬さがある場合は、柔軟性を出すためにまずは丁寧にストレッチ、マッサージ。

 

 

3. 格関節を大きく動かす

リラックスした状態で負荷をかけずに、関節を大きく動かします。
寝ながらか、座りながら行うことがおすすめ。
動かす方の筋肉のトレーニング、反対側の筋肉は伸ばされてストレッチされて、両方の練習になります。(相反抑制)

遅筋線維の役割・鍛え方・傾向

【役割】
姿勢を保ったり、関節を支えたり、身体を安定させる筋肉。

日常で座っているだけでも体を支えるために働いています
全筋肉量の70〜80%が遅筋線維と言われています。(わりと多いですよね)

別名:「赤筋線維」「姿勢筋線維」と言われます。
長時間活動できて、疲労しにくいのが特徴。
マグロやカツオなどの赤身魚のイメージです。いつも回遊しているようなお魚は赤身です。

 

【鍛え方】

意外かもしれませんが、速筋線維を鍛えるよりも難しいかもしれません。気長に実践する意欲というか、根気が必要です。

① 軽い負荷で回数を多くトレーニングする → 気長にやる
② ゆっくりと時間をかけて運動をする → 気長にやる
③ 求心性収縮をする
④ 微細な収縮運動 →  気長にやる
⑤ ストレッチ →  気長にやる

これらの運動で効果的に鍛えることができます。見ての通り気長にやる項目が多いです。

遅筋線維の筋トレは軽い負荷で回数を多く、又は片足立ちのようにバランスの練習などをします。
ゆっくり行うようなヨガやウォーキングもいいです。

硬くなるのでストレッチも効果的。
硬くなっている筋肉は感覚センサーが働きにくくなっているので、体に意識をして、集中して、時間をかけて丁寧にストレッチをしていくのも効果があります。

 

【傾向】

赤筋線維の多い筋肉は「拘縮」「短縮」「硬化」「筋緊張亢進」する傾向にあります。
ストレスによっても影響を受けて硬くなります。

衰えることで「硬くなる」のが遅筋線維の傾向。
硬くなってしまうと関節の動きを妨げたり、隙間が狭くなります。運動のパフォーマンス、特にしなやかさが低下します。

 

筋力が衰えているだけなら…速筋線維から

単純に筋力が衰えているだけなら(そんな人は少ないですが)、速筋線維を鍛えることから始めていいと思います。

速筋線維は重いものを持つ、早く動くのが得意です。

かといって、いきなり重いウェイトから始めるとか、100%の力でスポーツをするのはダメです。体を壊してしまいます。
ケガのあとまた再発することもあるが、ほとんどは急な速筋線維で運動が原因。

速筋線維といえども、まずは優しい負荷からはじめて、徐々に強度を上げていきます。(漸進性の原理)

もともと体がすごく柔軟な人は、安静後も体が硬くなりにくいです。

速筋線維の役割・鍛え方・傾向

【役割】
重いものを持ち上げたり、瞬間的に力を発揮するときに働く筋肉。

別名は「白筋線維」「相性筋線維」と言います。

普段はあまり動かないですが、獲物を獲るときは一瞬の素早い動きをします。
カレイやヒラメなどの白身魚のイメージ。

 

【鍛え方】

普段日常生活ではあまり使われないので、運動をして鍛える必要があります。ジムに行ったり、スポーツをしたり、日常よりも負荷のある運動が必要です。

① 重いものを持つ(強い負荷をかけるような運動)
② 速い瞬発的な運動
③ 遠心性収縮

これらの運動で効果的に鍛えることができます。

 

【傾向】

速筋線維が多い筋肉では『弱化』『弛緩』『萎縮』が起こる傾向があります。
一言で言うと「弱る」

ケガをする前に運動習慣がない人は、トレーニングをしてもなかなか筋肉がつきにくいこともあります。

 

まとめ

ケガ後の衰えてしまった時のトレーニングの進め方を書きました。

ポイントは、
「遅筋線維のトレーニングを優先すること(ゆっくりとした運動)」

「速筋線維も優しい負荷から始めること」

筋肉の傾向を知っておくと、ストレッチしたらいいのか?どんなトレーニングをしたらいいのかが
わかるようになるので、自分に合ったトレーニングを選択できます。

傾向に合わせたトレーニングをするとより効果的になります。

体は自分で作っていくことができるので、丁寧に大事にしながらトレーニングを進めてほしいと思います。

体の構造を知ってトレーニングをすれば、確実に体は変化するので、楽しんで実践してください!