「身体が硬くてなかなか柔軟にならない」
「今まで何をしても柔軟にならなかった」
という方は多いのではないでしょうか?
そんな方に【テクニックの基礎】として、この記事を読んでいただけたらと思います。
身体には、人それぞれの個性があります。
顔の形や身長、髪質などが人それぞれ違うように、自分と全く同じ身体の人はいません。
「質」や「動作のクセ」は人それぞれ違うので、
『この運動をすると、この筋肉を鍛えることができます!』とは、簡単には言い切れないのです。
例えば、「腕立て伏せををするとき」
胸の筋肉を使う傾向になる人、
腕の筋肉を使う人、
肩甲骨を固定しながら行う人がいるように、
人それぞれ傾向が違います。
じゃあ、みんなに共通していることはなんなのか?
今回は、「人が共通して持っている能力」を使って、体を柔らかくするテクニックを3つご紹介します。
テクニックとして用いるのは、体に備わっている反射作用です。
反射は、体が硬い、柔らかいに関係なく、すべての人にある生理的なものです。
どなたでも実践することができます。
このテクニックのメリットは、応用が効きやすい。
アイデア次第でどの部位でも行うことができる基本的な方法です。
理屈をしっかりと覚えることで、無理なく体を変化させていくことができるのでオススメです。
テクニックはこの3つです
2. ゴルジ腱器官の反射を利用するテクニック
3. 相反抑制
体を柔らかくする3つのテクニック
筋紡錘の反射抑制テクニック
筋紡錘(きんぼうすい)とは、筋肉の長さを感知するセンサーです。
運動中に筋肉が急に伸ばされて、線維が切れてしまったり、痛めてしまうと困ります。
そこで、筋肉が急に長くなると、その筋肉を緊張させて守る反射が働きます。これを『伸長反射』と言います。
長さを感知すると、筋肉は「伸びすぎないようにしよう!」という反応が出る仕組みになっています。
これは体を守るために大事な作用なのですが、筋肉を伸ばしたいときは、過剰に働くことを抑えたいところ。
そこで、この筋紡錘をコントロールするテクニックを使います。
筋紡錘をコントロールするためのポイントは3つ。
それは『スピード』『時間』『強さ』です。
1. スピード
あくまでも目安ですが、関節を動かすスピードが『1秒間に5度以下』だと、伸長反射(筋肉が緊張する反射)がおきにくいといわれています。
ということは、動作をゆっくりと行うと筋肉が緊張しにくいのです。
2. 時間
筋肉が伸びて動きがストップしたとします。
この時、多かれ少なかれ伸長反射が働いているはず。
この伸びた位置で、無理をせず、やさしい負荷で待ちます。
すると、筋肉は『もう安全かな?』というふうに感じて、伸長反射の作用を緩めるタイミングがやって来ます。
時間をかけて待つことが重要です。
このタイミングは個人差や、負荷の強度などによって違うのですが、だいたい30秒くらい。
30秒程度やさしい負荷で待って、その後にもう一度関節の角度を曲げてみると、わずかに可動範囲が広がるかもしれません。
3. 強さ
筋肉を守るためにある伸長反射。
強い刺激では余計に『守ろう!』とがんばって筋肉を収縮させてしまいます。
なので、強さも大事。
やさしく、気持ちよく筋肉を伸ばします。
*体が硬い人は時間をかけることを心がけましょう!
詳しくはこちら
ゴルジ腱器官の反射テクニック
ゴルジ腱器官とは、筋肉が腱に変わる部分(筋腱移行部)に多い感覚センサーです。
ゴルジ腱器官は、腱に張力がかかると、筋肉に『緩んで!』という指令を出します。
この反射は、腱に過剰な張力がかかって切れてしまわないように身体を守るために備わっています。
腱に張力が働くときは、
『筋肉と腱が伸ばされているとき』
『筋肉が強く収縮しているとき』
の2つ。
特に2つが同時に起こる、『伸ばされながら、筋肉が収縮するとき』は、腱は強く伸ばされます。
腱にとって黄色信号なので、『緩んで!』の反射は起こりやすくなります。
この反射は、筋肉収縮後15秒程度持続します。
筋肉が緩んで安全になっても、警戒のために『緩んで!』の反応はしばらく残るんですね。
これを利用して、筋肉を強く収縮させた後に、『緩んで!』という反応に乗ってストレッチをします。
ポイントのまとめ
筋肉を強く収縮させた後、緩めてストレッチ!
できれば筋肉を伸ばした位置で収縮させる。
*この反射を最大限利用してストレッチに活かすコツは、
『筋肉を少し伸ばした位置で収縮させて、それを緩めた後にストレッチする』ことです。
相反抑制
相反抑制とは、筋肉を収縮させて関節を動かすとき、その反対側の筋肉は緩むように働く神経の作用です。
例えば肘を曲げるとき、上腕二頭筋が収縮するとします。
そのとき、反対側の肘を伸ばすための筋肉、上腕三頭筋は緩むように神経が働いてくれます。
この作用があるので運動を円滑にすることができます。
ストレッチに応用するには、『関節運動の最後にグッと筋肉を使うこと』です。
最後の可動域で筋肉を働かせるための『筋トレ』にもなりますし、相反抑制が働いて、反対側の筋肉は緩むように作用するので、ストレッチの効果が高まります。
ポイントのまとめ
動きがストップしたら、動かした方の主の筋肉を収縮させてフィニッシュ!
このテクニックを使ったストレッチの例
前屈
1. まっすぐに立った姿勢から、ゆっくりと時間をかけて、できるだけバランスをとりながら前屈していきます。(筋紡錘の反射抑制)
2. 動きがストップしたら、そのまま30秒ほど楽に待ちます。
(筋紡錘の反射抑制)
3. 体には重力がかかっているので、その力に反して(利用して)体をわずかに起こします。
① ハムストリングスの収縮を使って骨盤を起こす
② 背骨のどこかを起こすように背中側の筋肉を収縮させる
③ 踵をほんの少し持ち上げてふくらはぎを収縮させる
伸びている後ろ側の筋肉ならどの筋肉を使ってもOKです。
大事なことは伸びた位置で収縮させるということ。(ゴルジ腱器官の反射を利用)
4. 最後は前側の筋肉を収縮させます。
①太ももの前側の筋肉を収縮させる
②腸腰筋の収縮で股関節をさらに曲げる(相反抑制)
注意すること。実践のコツ
最後に、実践するときに注意すること、実践のコツをご紹介します。
◉ゴルジ腱器官の反射を利用するときに、『伸びた位置』の方が効果的なのは間違いありません。
でも、伸びた位置は決して筋肉が強いわけではありません。
それほど強い収縮を意識しなくても生理的な反射は起こりますので、やさしく実践することから始めるほうが無理がありません。
強さよりも、収縮した感覚を大事にしてください。
◉人によって筋肉の質が違います。
筋肉の硬さが『緊張している』くらいであれば、割とすぐに効果が出るはずです。
筋肉の硬さが『拘縮』くらい硬くなると、効果が出ることに時間がかかるかもしれません。
それでも、生理的な作用は必ず起こっています。
時間をかけて(期間をかけて)実践してください。焦りは禁物!
今回は、反射を利用したストレッチのテクニックをご紹介しました。
基本的な原理を学ぶことで、より効率的に、トラブルなく身体を整えていけるはず。
どなたでも共通した体のシステム・能力を利用して、健全な体作りを楽しんでください!