「とても体が硬くてストレッチの効果を感じない」
「ストレッチをがんばってるけどなかなか柔らかくならない」
と思うことはありませんか?
体に備わっている反射を利用してストレッチ効果を高めることができます。
私たちの体は「頭で考えて」動く以外にも、
「無意識」や「反射」で起こる動きがあります。
例えば、心臓の動きや汗をかくのは無意識に行われていますよね。
熱い物を触ったとき、無意識に手を引っ込めるのは、反射による動きです。
意識しなくても特定の刺激に対して起こり、身体を守るために備わっています。生きるために必要なものです。
このみんな共通に備わっている反射をうまく利用して、ストレッチ効果を高めることができます。
本記事では、反射の中でも「伸張反射」という機能の使い方をご紹介します。
とても体が硬くて、普通にストレッチしてもなかなか伸びない方は、参考にしてみてください。
伸張反射ってなに?
伸張反射とは「筋肉が急に伸ばされると、筋肉が収縮する」という現象です。
……伸ばされると収縮する?
矛盾しているようにも感じますが、実は体の中で伸張反射はいつも起こっています。日常から大活躍しているんです。
立ってるだけで姿勢を調整してくれる
立っているときや座ってるとき、バタンと倒れませんよね。これは反射的に筋肉がバランスをとっているからです。
姿勢を保つために筋肉は細かく働いています。(特にインナーマッスルのはたらき)
伸張反射は『筋肉が伸ばされると縮む』という反射です。
筋肉が伸ばされたらすぐに収縮させ、姿勢を補正しバランスを取っています。これが伸張反射の役割です。
例えば、隣の人と肩がぶつかっても倒れない。
動いてる電車の中で立っていられるのも、風が吹いているときに倒れないのも、伸張反射があるからです。この反射はいつも起こっているわけです。ありがたいですね。
姿勢調整するために重要な役割をしています。
筋肉を守る
もう一つ大事な役割があります。
筋肉が損傷しないように防御する役割です。
筋肉は急激に、または過剰に伸ばされると断裂してしまうかもしれません。
ゴムを思いっきり引っ張ると切れてしまうように、筋肉も急激に伸ばすと切れてしまう危険があります。これを防ぐために伸張反射が働きます。
これが無意識に行われている人間の体ってすごいです。
伸張反射の仕組み
では、伸張反射はどんな仕組みで起こっているのでしょうか?
筋肉内には「筋紡錘(きんぼうすい)」という筋肉の長さを感知するセンサーがあります。(筋肉の繊維にグルグル巻かれている)
筋肉が伸びたことを感知すると、切れてしまわないよう収縮する運動が起こります。
もうちょっと詳しく図付きで解説します。
① 筋肉が伸ばされると
② 筋肉内にある筋紡錘(センサー)が、伸ばされた刺激を感知。
③ Ia線維という「神経」を伝って「刺激がきましたよー」と脊髄に伝えます。
すると脊髄は、伸びた筋肉を収縮させるようにと、α運動神経に「縮め」と命令を出します。
④ 「はーいわかりました」と筋肉が収縮する
一番わかりやすいのは膝蓋腱反射(カッケ)です。
ヒザのお皿の下を叩くと、ヒザがポンっと伸びる反射です。
伸張反射を理解したストレッチとは
筋肉が急に伸ばされると収縮する伸張反射。
しかし、ストレッチでこの反射が出てしまっては筋肉は伸びません!筋肉が収縮しようとするためです。
どうすればいいの?
できるだけ伸張反射を緩めながら行います。
「ストレッチは、伸張反射を抑制して行う」のがコツです。
その方が筋肉は伸びていきます。
では実際にどうやってストレッチをするのか?
ストレッチのコツ
筋紡錘が働くのは筋肉を守るためです。
なので、「急な刺激」「強い刺激」に対して、働きやすい。
その反応を考えてストレッチをします。
ポイントは3つです。
・ゆっくりと動作を行う
早く柔らかくなりたい気持ちはわかるのですが、早く行うと『急な刺激』として認識されて、『守らなきゃ!!』と防御姿勢に入ります。
動作をゆっくりとやさしく柔らかく行うことで、伸張反射が出にくくなります。
・待つ
伸張反射がゆるむには時間がかかります。
筋紡錘の興奮が弱まるのは、だいたい10〜15秒くらいかかると言われています。
「あーもうこれ以上大きな刺激がこないから大丈夫だなー」と反射作用を緩めてくれるまで15秒くらい。
それよりも短い時間だとストレッチの効果はあまり期待できません。
例えば太ももの裏を伸ばすとして、反動をつけてギュンギュンやるのではなく、伸びるのを待つんです。
伸張反射を緩めてからストレッチをするには、30〜60秒くらい時間をかけてゆっくり行います。
また、強く行うと、それに抵抗しようとして(筋肉の断裂を守ろうとして!)ゆるむのに時間が余計にかかります!
反動をつけて行うよりも、優しく行った方が緩みやすい。優しくです。
・少し戻してから伸ばす
筋肉の長さに対して伸張反射は働いてしまいます。
「筋肉が伸びたわ。縮めなきゃ!」という具合です。
それを抑えるために、ストレッチで伸ばしたら、体勢を少し戻します。
筋肉のセンサーは、筋肉が伸びた状態(体の感覚では硬いところがつっぱってるなという感覚)から、少し戻すと
「あ、つっぱったと思ったけど、ゆるんだな」と筋肉が興奮を弱めます。
そこから再びゆっくりとストレッチ(筋肉を伸ばす)していきます。
伸ばす → 少し戻す → 再び伸ばす → 少し戻す → 再び伸ばす
みたいな感じです。
どうでしょうか?イメージつかめたでしょうか?
ヨガをするとき、伸張反射を抑制しながらポーズを深めるのもおすすめです。
まとめ
反射は私たちの無意識下で起こっています。
そのため反射自体を自分でコントロールするのは難しいです。
しかし、伸張反射がどんな仕組みなのかを知ることで、それをうまく利用してストレッチをより効果的にできます。
とても体が硬くて普通にストレッチしてもなかなか伸びない方は、伸張反射の性質を利用してみてください。
ぜひ運動に取り入れてみてくださいね!