等尺性収縮の効果と運動のポイント

等尺性収縮の特徴

等尺性収縮とは関節の運動を起こさないで行う筋肉の収縮様式です。
筋肉が長さを変えないで収縮している状態→動きは止まって見えるけど筋肉は収縮している状態になります。

例えば、
・椅子に座って、膝を完全に伸ばして保持している時の大腿四頭筋の収縮
・ダンベルを持って肘を90度に曲げて保持している時の上腕二頭筋の収縮
・空気椅子のように膝と股関節を曲げて、かがんだ姿勢を保持している時の大腿四頭筋の収縮
などがあります。

筋肉の収縮活動なので筋力トレーニングになるのですが、通常イメージする筋トレとは少し違うように感じます。
一見すると「これは筋トレなの?」と思うかもしれません。

 

等尺性収縮トレーニングのメリット6つ

等尺性収縮には、関節を動かしながら行うトレーニングにはないメリットがあります。
トレーニングの中にうまく取り入れることで、体を鍛えることや整えることに役立つはずです。

モーターユニットの活性化

いきなり難しい言葉が出てきてしまいましたが、モーターユニット=「運動単位」に関して少し説明したいと思います。
「運動単位」とは、一つの運動神経が支配している筋線維のグループのことを言います。支配している1つの神経と、その神経に支配される筋線維のグループをまとめて、一つの運動単位(モーターユニット)と呼びます。

一つの神経線維に沿って指令が送られてくると、その神経が支配している筋線維は全部まとまって同じように収縮します。
運動単位の中では、「この筋線維は収縮して、この筋線維は休んでいる」ということはありません。どんな時にも一つの単位として働くので『運動単位』と呼ばれます。
一つの筋肉の中にもこの運動単位がいっぱいあります。そして運動単位にはさまざまなサイズがあります。
一つの神経で数十本くらいの「小さな運動単位」のものもあれば、2000本くらいの筋線維を支配している「大きな運動単位」もあるんです。
基本的には小さな運動単位から動員され、グラデーションのようにより大きな運動単位へ移行しながら筋肉は収縮していきます。
これを『サイズの原理』と呼びます。

等尺性収縮はこの運動単位(モーターユニット)活性化します。
等尺性収縮しているときの、筋肉の長さ、強度によって、それに必要な運動単位の活動が活性化することになります。
ということは筋線維だけでなく、運動神経の働きも活性化されているということです。

力が入りにくい関節の角度も鍛えることができる

ベンチプレスや重量挙げなど、瞬発的な力を発揮する場合で考えてみます。
こういった運動は、瞬間的に爆発的な筋収縮を起こし、勢いや反動も利用して持ち上げていることになります。
最初とても強い力を瞬間的に発揮して、空間に重たい負荷を持ち上げるのですが、部分的に切り取っていくと途中ではその重さを保持できません。力を発揮しにくい角度があります。

例えば同じ肘を曲げる運動でも、力を発揮しやすい角度と発揮しにくい角度があります。

等尺性収縮は力を発揮しにくい角度でも実践しやすいトレーニング方法です。
鍛えたい角度、格好で収縮させることができます。
工夫次第で、さまざまな角度にセッティングして筋肉を鍛えることができるので、便利なトレーニングです。
セッティングした角度で関節を安定させることにもなります。

身体の支持性を向上させる

静的な筋収縮運動は身体の安定や支持性を向上させる運動です。姿勢を保ち、インナーマッスルのトレーニングにもなります。

トレーニングによる関節への負担が少ない

等尺性収縮運動の特徴は関節の運動を伴わないで筋収縮すること。
関節の摩擦が起きにくいので、関節面を守りながら筋肉のトレーニングができまるというメリットがあります。軟骨が減っているなど、関節に問題がある人でも実践しやすいです。

怪我をしにくい

瞬間的に大きな力を出す運動や、ベンチプレスなど負荷に自分を合わせなくてはいけない運動は、トレーニング効果は大きいのですが、反面筋肉を痛めてしまう危険もあります。
等尺性収縮のトレーニングは、自分の力に応じて負荷が決まるので、能力を超えた負荷になりにくい。比較的安全にトレーニングができるメリットがあります。

フォームをきれいに保ちやすい

負荷が大きい場合は代償動作が起こりやすいです。
例えば手にダンベルを持ち上げるとき、肘の屈曲で上腕二頭筋を使いますが、重さが大きいと、肘の屈曲と同時に背中を丸めたり、背筋を使って腰を動かす勢いで動作をしたり、さまざまな代償動作が起こりやすいです。
等尺性収縮でのトレーニングは最初にセッティングした位置で力を発揮することになるので、セッティングした位置からあまり崩れることなく運動しやすいです。

 

等尺性収縮の注意とデメリット

等尺性収縮の運動ではメリットもあるのですが、その特徴が故のデメリットもあります。

身体の連動した動きを作るには不向き

動作(モーション)を起こさずに、筋収縮をしているだけなので、連動したしなやかな運動、パフォーマンスを向上させることには向きません。
スポーツなどのパフォーマンス向上や実際の運動は別で練習する必要があります。

スピードはつかない

連動した運動と似ていますが、静止した収縮様式なので、動く時のスピードを向上させるには向いていません。
収縮性、瞬発力を発揮させるのは違うトレーニングになります。

動的な筋力訓練よりも筋肥大の効果は小さい

筋収縮の性質上、自分の力の最大限よりも超えてステップアップしていくことは苦手です。
目安もないですし、あくまで自分の感覚次第な筋力トレーニングになります。
怪我や損傷のリスクが少ない分、動的な収縮よりも筋肥大の効果は小さいです。

血圧の上昇に注意

力を数秒発揮し続けることになるし、力いっぱい押すことにもなるので、その間血圧は上昇します。
高血圧症や循環器に何か心配がある人は特に注意が必要です。

 

等尺性収縮で運動するときのポイント

等尺性収縮で運動する時に、できれば意識をしたいポイントをご紹介します。

息を止めない

息を止めると急激な血圧上昇が起こることもあります。運動中は息を止めず、ゆっくりと吐くようにしましょう。

筋収縮時間は6〜7秒

生理学的に最大筋力を出し続けるのは7秒が限界と言われています。6〜7秒間筋収縮を保つようにすると効果的です。
最大収縮ではなくても、10秒程度保持すると効果があります。

1日1回でも効果はある

筋肉痛になることはあまりないと思いますが、運動神経も活性化されるので、神経的な疲労もあります。
同一の角度、格好での等尺性収縮運動は1日1回でも良いですし、2日、3日インターバルをとっても効果はあります。
少しずつ角度や位置を変えながら実施すると、よりトレーニングには効果的です。偏った部分的な疲労にならずにトレーニングすることができます。

 

トレーニング方法の例

等尺性収縮トレーニングをする方法をご紹介します。
本当に工夫次第でいろいろなバリエーションがあります。
動的な収縮運動と合わせて実践してみてください。

①胸の前で手を合わせて押し合う

両方の手のひらを胸の前で合わせて、息を吐きながら7秒ほど押し合います。
胸の筋肉(大胸筋)に意識を向けて、収縮していることを感じます。
手のひらの合わせる位置を上下、左右少しずつ変化させると、胸の筋肉を満遍なく鍛えることができます。

②腕立て伏せ

腕立て伏せの格好で、身体を降ろす時途中で止めます。
腕の後ろ(上腕三頭筋)や大胸筋、肩甲骨周囲の筋肉を鍛えることができます。手の幅を開いたり狭くしたりすることで、動員される筋肉や筋線維の位置を変えることができます。
肩甲骨を前へ突き出すことで前鋸筋も有効に鍛えることができます。
応用編:動的な収縮と組み合わせて、腕立て伏せを数回、数十回行って、筋肉が疲労した時に等尺性でキープすると効果がアップします。

③スクワット(空気いす)

膝と股関節を曲げて、足をかがめた位置でキープします。
太ももの前面、後面の筋肉、お尻の筋肉を鍛えることができます。
足を左右に開くスタンスの幅、つま先の向き、屈む深さ、スネを立てる角度などを微妙に変化させることで、下半身の筋肉を満遍なく鍛えることができます。
応用;下肢の筋肉は大きいので、物足りなければ片足ずつ行うと負荷が大きくなります。

④壁を押す

下半身のスタンスを決めて安定させ、手で壁を押します。
全身の筋肉を収縮させ、鍛えることができます。
姿勢はできるだけ良い姿勢を作ってから、その姿勢を崩さずに力いっぱい押すようにします。

まとめ

等尺性収縮トレーニングは静的収縮なので一見地味ですが、とても応用の効きやすい運動です。
強度の高い負荷がかかるトレーニングでは鍛えられない部分にも筋肉の収縮を作りやすいです。

動的収縮と合わせて行うことで、より効果的なトレーニングメニューを組むことができますので、実践してみてください!