運動神経は鍛えることができる【神経系のトレーニング】

中枢神経系による筋力の調節

「筋肉を使う」「トレーニングをする」とき、私たちは骨格の筋肉に注目しますよね。
『今この筋肉を使っているなー』と。

意識を使うことは、トレーニングにとても有効です。

ただ、『重りを持って肘を10回曲げる』よりも、『上腕二頭筋がすごく働いている』ということにフォーカスしたほうがトレーニング効果が高いんです。

知っている方は多いと思いますが。

さらにもう一つ意識をしておく必要があることは、

『筋肉を動かすのは、神経系によって行われている』です。

 

大きな筋肉であっても、神経系の筋力調整がうまく機能しないと大きな力を発揮することはできません。

神経系の調整がうまく機能しないと、なめらかな運動はできません。

 

よく「運動神経が良い」とか「私は運動神経が悪い」と言いますが、それは「筋力が強い、弱い」とは違って、
「脳を含めた神経系と、筋肉との情報交換がスムーズか、スムーズでないか」ということを言っていると思います。

今回は、中枢神経系による調整の3つのシステムをご紹介します。

神経系のシステムを覚えて、トレーニングを効果的に、安全に行ってください。

 

 

運動単位による調整

1個の運動ニューロンが支配する筋線維の単位を『運動単位』といいます。

例えば、1個の運動ニューロンが5本の筋線維を支配して運動単位を作っているとします。
そして、その運動単位が10個集まって筋肉になっていたとします。

弱い力を発揮する場合には、10個すべての筋線維が働く必要はないので、1個の運動単位だけ収縮して働きます。

さらに、強い力が必要になる場合には
「1→2個の運動単位」「2→3個の運動単位」
というように、運動単位を増やして大きな力を発揮していきます。

筋肉が発揮する力は、この動員する運動単位の総和になるんです。

この例の場合は、0〜10個までの11パターンの力の発揮の仕方ができるということになります。

筋肉の発揮する力を徐々に上げていくときには、運動単位は運動ニューロンの支配する筋線維の数が小さい方から動員されます。これを『サイズの原理』といいます。

 

基本的には、遅筋線維は運動単位が小さく、速筋線維は運動単位が大きいので、遅筋線維の方から順番に動員されていくことになります。これが種類による調節です。

運動のパターンとしては
『遅筋線維が先に動員されて、それでも足りなければ、徐々に速筋線維が段階的に動員を増やしていく』ということが言えます。

 

ポイント
運動の強度によって、働く運動単位とお休みする運動単位の比率が変わってくる。

 

α運動神経の発火頻度による調整

神経の命令が届いて、1回の神経発火に対して筋線維が1回収縮反応をすることを『短収縮』と言います。
それが連続して、筋線維が完全な弛緩を挟まずに収縮を繰り返すことを『強縮』と言います。

この強縮は、神経の発火頻度が高くなるほど収縮力が加算されて、力が強く発揮されるようになります。(発火頻度を増大させてもある一定を超えると筋の収縮力は変わらなくなります)

遅筋線維よりも速筋線維の方がこの一定のラインが高いので、遅筋線維は発火頻度が多少変動しても収縮力への影響は小さく、速筋線維は筋収縮の調整に幅があるということがわかります。

ポイント
筋肉の発揮する力は、動員される運動単位と発火頻度の総和で決まります。
手指の筋肉や後頭下筋群のような小さな筋肉では、運動単位の発火頻度の変調によって、お尻や下肢のような大きな筋では主に新たな運動単位の動員によって調整が行われます。

 

運動単位の活動タイミングによる調整

重量挙げの選手のように、重たいものを持ち上げるときにブルブルと筋肉が震える経験をしたことはありませんか?

運動単位の動員と発火頻度による調整の他に、一つ一つの運動単位が収縮するタイミングによっても筋力は調整されています。

運動単位がそれぞれ別々のタイミングで収縮するよりも、全部が同じタイミングで収縮する方が大きな力を発揮します。
これは運動単位の『同期化』と言います。

反対に運動単位の収縮タイミングを少しずつずらせば、大きな収縮力ではなく、一定のなめらかな力になります。これを『非同期化』といいます。

『同期化』は、強く、瞬発的。
『非同期化』は、なめらかに持続的な力です。

ポイント
大きな強い力を発揮することと、なめらかな運動ではトレーニング方法は変わってきます。
運動単位の働くタイミングを同期させるかしないかに違いがあります。

 

 

トレーニングにどう使うのか

私たちの体はトレーニングを始めると、いきなり筋肉が大きくなるわけではありません。

『筋トレのやり始め』『新しい運動を取り入れるとき』は、
使われていなかった運動単位(神経+筋肉)が働き始める必要があります。

最初に、神経系が運動のために適応する期間があります。(神経適応)
だいたい2週間くらいです。

筋肉が大きくなっていくのは、その後6週〜8週くらい経ってからです。

筋トレをすると急にパワーが上がるのは、先に神経系の適応があるからなんですね。

 

【神経系を意識したトレーニングのポイント】

① 運動は低負荷から始める

新しい運動を取り入れたとき、トレーニングの始めは負荷の少ない運動から始めて、遅筋線維を目覚めさせ、神経系が働く期間を考慮しましょう。
そのあとに負荷をかけて、速筋線維とそれに対する神経系を作っていくほうが安全です。

負荷の少ない運動

遅筋線維を目覚めさせる(期間を考慮)

負荷をかけて、速筋線維と神経系を作っていく

 

② 運動の強度を変える

同期化すると力の強い筋肉になり、非同期化では、しなやかな筋肉運動をしやすいです。
低負荷の運動にもしっかりとした意味づけができるということ。

負荷のバリエーションを考慮して、自分に合った運動をしましょう。
極端に言えば、できるだけ小さな筋収縮を作ってみるのも神経系の練習になります。

 

③ パフォーマンスを考慮して運動する

スポーツやヨガをするときなど、単一の筋肉だけを動かすことは多くありません。
動きの中で力を抜く部分、力を入れる部分のすみ分けがうまくいって、必要な箇所に必要な分だけ収縮する。
その収縮が他の筋肉と連動する必要があります。
動作習得を考慮した運動を行って、運動するための神経系を鍛えることもトレーニングになります。

 

 

『体を動かす=神経系も働いている』と考えてみましょう。

運動神経を鍛えていくには、筋肉と脳の情報交換の繰り返しが効果的です。
ぜひ参考にして、体を動かすときに取り入れてみてください。