長趾屈筋の作用とトレーニング方法 【ふくらはぎの奥から足趾の先まで伸びる多様な役割を持つ筋肉】

長趾屈筋とは

長趾屈筋は下腿を支える、ふくらはぎの深層の筋肉です。
腓腹筋、ヒラメ筋の裏側にあって、表面からは見えません。
太くもないですし、奥に隠れているです。

でも、その働きの多彩さは想像以上だと思います。
たくさんの関節をまたいで足の指先まで腱は伸びていて、途中から4本に分かれます。
足の裏では腱に筋肉が付着していて、その筋肉まで合わせると枝がたくさんあるように見えます。
枝が分かれているため、運動方向や力のトルクも一方向ではありません。
解剖学の本などでもさらっとしか載っていなかったりするのですが非常に大事です。

英語では【flexor digitorum longus muscle】
flexor=屈曲する
digit=趾
という意味です。

特徴

脛骨の後ろ、中央にある筋肉です。ヒラメ筋のすぐ裏側にあります。
力はそれほど強くはありませんが、足の指を曲げる』『足首を底屈する』『足首の強さに関わる』『内側縦アーチに大きく貢献する』『下腿を支える』など、いろいろな役割があるのが特徴です。

歩く時には足底が床に接地する少し前から活動を始めます。(後脛骨筋、ヒラメ筋がいち早く活動を始め、腓腹筋、長趾屈筋が働き、長母趾屈筋が少し遅れて活動を始める)
長趾屈筋が一番活躍するのは、足底が接地した後、脛が前に倒れていくのを制御するときです。
下腿が倒れていくのを支えるときに、筋肉が伸張されて緊張が高まることで、推進力をが生まれます。

長母趾屈筋よりも小さいですが、4趾を屈曲します。
足の裏の腱は、虫様筋の起始、足底方形筋の停止となっていて、いろいろな方向から制御、調整として作用する土台にもなっています。

起始と停止 

起始 ー 脛骨後面中間1/3、後脛骨筋の近位付着部より内側
停止 ー 第2〜5趾の末節骨

神経支配

脛骨神経 ー L5ーS2

働き

①足首(距腿関節)の底屈
②距骨下関節の回外(内反)
③第2〜5趾屈曲
④足部のアーチ形成に関与
⑤下腿が前に倒れるのを制御する(特に歩行時に推進力を生む)
⑥虫様筋の起始、足底方形筋の停止

 

長趾屈筋の作用

足首を底屈、距骨下関節の回外(内反)

長趾屈筋は内くるぶしの後ろ側を通過します。
その走行から、距腿関節(足首)の底屈に関わり、距骨下関節の内反にも作用します。

第2〜5趾を屈曲する

長趾屈筋は脛骨の後ろ側から始まり、足の指先まで(末節骨まで)腱が届きます。
足の裏の筋肉(内在筋)を通り越す、長い筋肉。
末節骨まで届くのは長趾屈筋、長母趾屈筋だけです。
足首の底屈も合わせて運動すると、バレリーナが足を伸ばしているようなイメージになります。
運動の順番は、足趾の屈曲→足首の底屈になります。

足部のアーチ形成に関与

他の足部内在筋のともに足のアーチを形成することに貢献します。
長母趾屈筋は内側縦アーチの保持に大きく貢献しますが、長趾屈筋は内側縦アーチに貢献しながらも横アーチにも関与します。
第2〜5趾まで斜めに広く走行していくからです。
また、長趾屈筋の足底の腱には、虫様筋や足底方形筋が付着して、多様な運動方向に関与することになります。

下腿が前に倒れるのを制御する

ふくらはぎの筋肉は歩行の時に下腿が前に倒れていくのを制御します。
腓腹筋、ヒラメ筋は地面を蹴りだす時、瞬時に強い力を発揮します。
長趾屈筋は下腿が前に倒れていくのを制御する時に伸ばされる力を溜めて、踵が離れる時に推進力に変えます。
制御機能としての働きの方が、日常生活では働く機会が多いかもしれません。

虫様筋の起始、足底方形筋の停止

とても特徴的なのが、虫様筋の起始、足底方形筋の停止になっていることです。
筋肉の腱に筋肉が付いています。

足底方形筋は踵骨の内側、外側に2頭になって付着しています。
長趾屈筋は内くるぶしの方向に走行しているので、内側に足趾を引っ張るのですが、その方向を足底方形筋が補って変化させています。
虫様筋は第2〜5趾のMP関節に付着します。
長趾屈筋の腱が末節骨に達するのと合わせると、8本になって第2〜5趾の動きに関与することになります。
虫様筋はMP関節を屈曲し、IP関節を伸展方向に方向付けするため、IP関節を屈曲させる長趾屈筋の作用とのバランス関係が面白いです。

 

筋力トレーニング方法

足趾を曲げる運動

足趾を先まで強く握る。足底に行くと腱なので、ふくらはぎの奥で収縮をイメージできると効果的。

タオルギャザー

タオルがある場合は、腰かけて、足の下にタオルを敷いて、足の指でタオルを引き寄せてくる。

足趾を曲げてから足首を伸ばす

①足趾を3割くらいの力で握る。
②足趾を握ったまま足首を伸ばしていく
③足趾を握り、足首を伸ばし、「もういかないな」というところまできたら、ふくらはぎの奥の筋肉の収縮を意識する。(意識的に収縮させてもいいし、意識するだけでも良い)
*長趾屈筋は足の指先の骨(末節骨)まで腱が伸びるので、足趾の屈曲と足首の底屈両方を同時に行うことができる筋肉。運動の質的に足趾の屈曲を先に起こします。

下腿を前に倒し体を支える運動

①足の指を遠くのに伸ばして立位をとる。
②足のアーチを意識的に作り(内在筋を3割程度で収縮させ)土台を安定させる。
③遠くに置いた足の指先もしっかりと地面についていることを意識して、脛から前傾する。ふくらはぎの奥に緊張、つっぱり感、収縮を感じたまま7秒キープする。
④ゆっくりと直立に戻って一度リラックスする。
*7秒以上実践してもトレーニング効果は上がらないという研究結果もあるので、10秒程度を数回続けるといいと思います。
*長趾屈筋は伸びながら働き(遠心性収縮)、下腿が倒れないように制御する練習です。

つま先立ち

①足の指を遠くのに伸ばして立位をとる。
②足のアーチを意識的に作り(内在筋を3割程度で収縮させ)土台を安定させる。
③遠くに置いた足の指先もしっかりと地面についていることを確認して、踵を持ち上げるように意識をする。ふくらはぎの奥で収縮を感じれば、実際に踵が持ち上がらなくても長趾屈筋は収縮している。
④ふくらはぎを鍛えたい場合は踵を腓腹筋の力で踵を持ち上げる。

歩く

練習した後は、歩いてみて変化を確かめてみます。

 

ストレッチ方法

つま先を立てて正座のように座る

①足趾を立てて、正座のように座ります。踵の上にお尻を置きます。
②足趾が伸びているのを感じながら、足首も背屈させていくと、よりストレッチされます。体を前へ倒して床に手をつき、手でお尻を後ろ方向へ誘導しても良いです。

 

運動のコツ

実際の運動では足趾を曲げるよりも『下腿を支える運動』『つま先立ち』の方が実用的です。
つま先立ちは、最初に強く運動すると腓腹筋、ヒラメ筋が働いてしまうかもしれません。
長趾屈筋を鍛えるには、低負荷から運動を起こすことがコツです。

足首の運動では足首を伸ばすと(底屈すると)足趾の屈曲が緩んでくる人もいるので、屈曲が緩まないようにキープしながら足首を底屈させます。最後はふくらはぎの奥で収縮を感じるのがコツです。