筋膜とは何?筋膜とfascia(ファシア)について整理した

筋膜とは何?

「筋膜は筋肉を包んでいる膜でしょ」という返事が多いので、今回は筋膜がなんなのかを整理する記事にしたいと思います。
実は、筋膜の定義は曖昧ではっきりとしていません。用語が定まっていないんです。

日本語の「筋膜」の誤解

日本語で「筋膜」と呼ばれているので、「筋肉を包む膜」と感じますよね。

英語ではfascia(ファシア)」といって「結合組織」「膜組織(まくそしき)」全般を表します。

なので、筋肉だけでありません。
骨を包む「骨膜」
心臓を包む「心膜」、血管も膜があるし、
中枢神経を包む「硬膜」なども膜組織に含まれます。

 

  • 筋膜=「筋肉を包む膜」と思われがちに…。
  • fascia=「膜組織を含む結合組織」
    筋膜を含む、骨や神経、血管、臓器を包む膜組織全部。

 

「身体全体の膜」として筋膜を見ていくと、新たな視点で体が見れるようになります。

身体全体の神秘的なつながりを感じて、「人体のネットワークのすごさ」に感動します。

筋膜を知ると運動するときのイメージが大きく変わります。トレーニングやヨガ、スポーツをする人は特に知っておく価値があります。

 

アナトミートレインという筋膜の本で有名なトーマス・マイヤーさんはこんなことを言っています。

将来の世代は、筋膜の内容を『当たり前』といい、我々の力学的な旧モデルを風変わりなものとして退け、この先駆的な洞察を土台にしていくだろう
これからは筋膜に基づいた体の考え方が主流になってくる時代かも

 

筋膜とは

筋膜は、筋肉を包む薄い膜のシートです。

すべての筋肉を包んでいます。体全体が1つのユニットとしてつながっています。

浅層から深層まで、層をまたいでもつながっています。立体的なウェットスーツのようになっています

筋膜の形が体の形を決めているので『第二の骨格』なんて言われ方もします。(ウェットスーツは脱いでもその形をキープしていますよね)

筋膜から見れば、骨はスペースを埋めるためのもの。

キャンプのテントを想像してみてください。
シートの形は決まっていて、スペースに棒を通してテントを作ります。シートは筋膜、棒は骨のイメージ。

 

筋肉全体を包む 『筋外膜』
筋線維の束を包む『筋周膜』
筋肉の線維を包む『筋内膜』

層になってつながっています。

 

fasciaとは

fasciaは、広い意味では人の体の”膜組織”『結合組織』も含みます。

膜という用語は以下のようにも提案されています。

『人体に広がっている結合組織系の軟部組織成分。また人体全体の張力伝達システムである線維性コラーゲン組織である』(筋膜研究学会2007&2009)

 

『人体全体』なんです。
筋肉だけでなく骨や関節、神経も膜に包まれていて、それらすべてが”膜”でつながっているので、全ての膜組織が『fascia』というふうに考えられています。
そして、張力が伝わっていくシステムになっています。

具体的には

浅筋膜、深筋膜:筋肉を包む膜(筋外膜、筋周膜、筋内膜など)

内臓筋膜:内臓を包む膜(内臓を包む膜。腹部の腸間膜や心膜も含みます)

硬膜:中枢神経、脳脊髄液を包む膜
骨膜:骨を包む膜
血管路:血管を包む膜
神経周膜:神経を包む膜
関節包:関節を包む膜
支帯靭帯
気管支の結合組織
椎間板の線維性被膜層など、、

もう、どこもかしこもつながっています。

 

筋肉だけでなく、骨、神経、血管を包む膜もファシア

さらに、靭帯や腱はファシアが部分的に高密度になってまとまったものです。
全身の組織がつながりあっていることがわかります。

「つながりあっている」感覚があると、体の感じ方も変わりませんか?

今まで分けて考えていた、関節包と靭帯、腱との間に明確な境界線を引くのではなくて、
お互いに結びついたネットワーク』というふうに考えられるからです。

密度や形を変えながら全身は”fascia”でつながり合っています。

 

筋膜 ファシアの役割

筋膜を含めたファシアが、体の中でどんな役割をしているのか。大きな役割として5つあります。

  1. 組織をわけ、滑走性を与える
    筋肉の線維同士や組織と組織を分ける区切りのようになっています。
    同時に組織同士を結びつける役割もしています。
    となり同士の組織を、それぞれが滑り合うように『滑走性』を与えて摩擦を軽減します。
  2. 力の伝達
    動いた時の力や、張力を全身に伝えています。
    筋肉の力を伝達させるのは筋膜のおかげ。筋膜が筋肉の収縮を感じ取って、関節や他の筋肉に力を伝えています。
    :筋肉から腱を通じて骨へ力が伝達することは実はほとんどありません。『どの筋肉が働いてこうやって動きます』という機械的で単純な考え方は時代遅れと言われています。
  3. 反動による運動
    fasciaは体を動かすときに反動を作ります。
    弓のように張って、反動によって生み出される力が動きのサポートになります。
    野球で球を投げるとき、ジャンプするときなど、fascia
    の弾力で反動する力も使っています。
    筋肉の収縮の力だけではありません。(野球のピッチャーは投げる前につよく胸を張ります。弓のように張った力を利用しています)
  4. 組織を支えて保護する
    fasciaによって筋肉や臓器の位置を保持しながら、外の
    刺激から体を保護する役割があります。滑走性と支持性があって、体のスタイルの良さや動きのスムーズさが可能になってきます。
  5. 通路
    fasciaは神経や血管、分泌管や排泄管など通路も作っています。新陳代謝のプロセスにとても重要な役割を果たしています。ホメオスタシスはfasciaの状態に左右されます。

 

fasciaからみる体

ファシアからみると体はつながり合うもの。

「全体」「一つのつながり」という視点を持つことができます。
逆に考えると小さな一つが全体に影響するということもわかります。

考え方の例。

  • ストレッチ = 一箇所の筋肉がゆるむことで、他の筋肉もゆるんだり姿勢全体が変わる
  • 痛み = 腰痛があったとして、腰だけでなく他の部分からも解決策を考える
  • 運動 = 手で投げるボールとき、力の伝わり方を考えて体全体で投げられるようになる
    などなど。。

『自由度』『創造性』『アイデア』が広がって、体づくりにも活かされます。

 

fasciaと代謝

運動だけでなくファシアの通路としての役割は全身の代謝、ホメオスタシスに大きな役割があるので、ファシアの状態をよく保つことは健全な状態(健康な状態)を保つことと言っても大げさではありません。

ファシアが硬く萎縮していたり癒着していると、その部分の代謝は滞って、十分な栄養や水分が届かなくなります。毒素も排出できないということになります。

ファシアに対してのエクササイズ(筋膜リリースやヨガ)は、健康な状態に直結していることがわかります。

 

まとめ

よく聞くようになってきた筋膜。
大きなくくりではfascia(ファシア)の中の一部に含まれます。

身体全体に広がるファシアを想像して、感じながら筋膜リリースやヨガをしてみると、体がよりダイナミックなものになります。
運動は代謝全体に関わることも、すごく意味のあることに感じますね。

古典的な解剖学とは少し違う感覚になる組織ファシア。実践してみてほしいです。