腸骨筋の特徴と効果的なトレーニング方法

腸骨筋  

腸骨筋は股関節を屈曲する大事な筋肉です。
体の表面からは見えないインナーマッスル。

位置を表す表現では『後腹壁』または『深腹筋』などと呼ばれます。

腸骨筋は、上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉である『大腰筋』とすごく密接にくっついています。
まとめて『腸腰筋』と呼ばれます。

長さは大腰筋より短くて、腸骨の前側から大腿骨小転子までの筋肉。
(大腰筋は胸椎12番の横突起、腰椎1番の椎体から、小転子まであって、途中で腸骨筋と合流します)
そして、大腰筋の外側にあります。

英語では【iliacus muscle】
iliacus=腸骨の
という意味です。

 

腸骨筋の特徴

腸骨筋は大腰筋と同様に、うまく使えていなに人も多いです。(日本人は腸骨筋、大腰筋は小さいと言われています)
特に現代の生活では、運動不足やデスクワークの多い生活によって、腸骨筋の働く機会が少なくなっています。

腸骨筋は大腰筋と共に歩行や正しい姿勢を保つために重要な役割を果たします。
大腰筋は、股関節の屈曲、股関節や腰椎の安定のために働いていて、『運動』と『安定』両方を担う器用な筋肉。腸骨筋はその役割を補助するような働きをします。

腸骨筋、大腰筋の2つを合わせた腸腰筋は、身体の動きで司令塔のような役割を果たします。

また、腸骨筋は大きな断面積を持ちます。
でも、骨格に密着して付いているので、トルク(力の回転モーメント)は小さいという特徴があります。

大腰筋も腸骨筋もインナーマッスルであるにも関わらず非常に大きな筋肉。
このことから、股関節、骨盤、腰椎の安定のために強力に働くことがわかります。
そして、運動パフォーマンスの中心として働いてくれているとも言えます。

 

起始と停止

起始:腸骨窩

中間:大腰筋と結合し腸骨筋膜に包まれる。

停止:小転子

神経支配

大腿神経 : L2 – L4  (大腰筋とは違う)

 

腸骨筋の作用

腸骨筋の作用は大きく2つです。

1、股関節の屈曲
2、股関節(骨盤全体)の安定

この筋肉が凝り固まってしまうと、骨盤が前傾して腰痛の原因になることもあります。
逆に弱ってしまうと骨盤が後傾して、姿勢の悪さにつながります。

股関節屈曲

一番わかりやすい作用としては股関節屈曲作用です。
大腿骨から腸骨の前側に着く筋肉で、股関節屈曲運動に対して一番のインナーマッスルとなります。

過剰な緊張があると、大腿筋膜張筋や縫工筋などの外側の筋肉を使って運動する癖がついているかもしれません。

骨盤前傾と姿勢調整

腸骨筋が、きちんと作用していると骨盤を前傾させ、腰椎の前弯のカーブを作ることに貢献します。
骨盤の最適な前傾は、その上に乗る背骨全体をリラックスさせて、キレイな姿勢、キレイな動きを作ります。
ヒップアップのためにも大事。

さらに、脊柱が正しい位置どりをするようになるので、腰痛や肩こりを軽減します。

股関節の安定

運動の初期には股関節の安定(大腿骨頭を腸骨の臼蓋へはめ込むような方向)に作用します。
安定化を図った上で股関節屈曲の正しい方向へと導きます。

あまりにも緊張しながら運動していることに慣れていると、この作用がおろそかになって、アウターマッスルがメインの硬い運動になります。

骨盤の側屈

大腿骨を固定した状態で、片側だけこの筋肉が働くと、骨盤(体幹)を収縮した側に側屈します。

背臥位では上半身または下半身を起こす

寝ている姿勢から起き上がるような動きで作用します。
床から起き上がる時、寝ながら足を持ち上げる時に働きます。

 

 

腸骨筋の筋力トレーニング

先ほども言いましたが、腸骨筋は大腰筋と共に、運動にとって重要なのですが、あまり働いていない人も多いです。
運動をしようとしても、他の筋肉が代償してしまい、腸骨筋が働かないまま運動していることがあります。

ここが注意点です!!

腸骨筋があまり働かなくても行動できてしまうので、最初は場所を覚えて、動く感覚を身につけることが大事です。
意識的にエクササイズをする必要があります。

股関節屈曲運動(座って実践)

1、椅子に腰掛ける。
2、片方の足の太ももの付け根付近に手を置いて、太ももを持ち上げる。股関節の屈曲と同時に骨盤はわずかに前傾させる。

*最初はあまり高く上げなくてもいいので、股関節屈曲と骨盤前傾が一緒に起こるように練習しましょう。
*大腿骨の付け根と、腸骨が近づきます。

股関節屈曲(立って実践)

1、立位で、片方の足の太ももを持ち上げる。
2、その時、骨盤が後ろに倒れないようにそのまま保つか、ほんのわずかに前傾させる。

*股関節屈曲と骨盤前傾が同時に起こるように意識をします。
*最初は壁に手をついて上体を支えて、安定したまま行うとインナーマッスルが働きやすくなります。

筋トレは、最初は低負荷から始めて、腸骨筋が働いてから負荷を強くしていきましょう。

セラバンドを利用した方法

1、椅子に腰掛けて、両方の太ももをセラバンドで結びます。少しタイトに。中間くらいか、少し膝の方に結びます。
2、骨盤をほんの少し前傾させて、背骨をまっすぐにします。(テーブルが前にあったら手をついてもいいです)
3、片方ずつ足踏みをします。骨盤はそのまま保つか、ほんのわずかに前傾させます。

スクワット

上のトレーニングを行なった後にスクワットを実践します。
腸骨筋が活性化されている状態で、トレーニング効果を身体に馴染ませるために役立ちます。

ウォーキングやジョギング

トレーニングをして腸骨筋を活性化させた後に、ウォーキングやランニングはオススメです。
全身の連動した動きが得られやすくて、姿勢の調整、インナーマッスルの活性化に役立ちます。
Befor、Afterで比べてみることで、トレーニングが大腰筋に対して効果があったかどうかもわかります。

 

 

腸骨筋のストレッチ

前後に足を開くストレッチ(アシュバサンチャラアーサナ)

1、右足を大きく後ろへ下げて、足の甲と膝を床につく。
2、両手は床。左足を挟むようにして置く。(指先だけ床につくようにします)
3、骨盤を起こして腸骨筋を伸ばす。
4、腰は反りすぎないように、骨盤の前側を伸ばします。ソフトなストレッチで時間を長く保ちましょう。
*できれば30秒以上行います。

反対側も同様に行います。

片膝を折って後ろに倒れるストレッチ

1、右足の膝を正座のように折りたたんで、後ろに倒れていく。
2、膝を折った方の足の反対側の肘を床について、上体を支える。
3、骨盤の前側が伸びているように意識をします。腰が反りすぎないように注意。ソフトなストレッチで時間を長く保ちましょう。

*できれば30秒以上行います。

反対足も同様に行います。

 

運動のコツ

腸骨筋が硬く萎縮してしまっている人、または弛緩してしまっている人は多く見かけます。
コツは、
硬く萎縮してしまっている人(骨盤前傾ぎみ)の人はストレッチを中心に、
弛緩してしまっている人(骨盤後傾ぎみ)の人は筋力トレーニングを中心に行うことです。

トレーニングをする際に気をつけることは3つあります。

1、低負荷でトレーニングを始めること
2、ストレッチは優しく時間をかけて行うこと
3、どこにあるのかをイメージして動かすこと

時間をかけてゆっくりとトレーニングを始めてみてください。

その後に、どんどん強度を上げていきましょう。

代償運動で他の筋肉が働きやすいので、意識をすることが大事な筋肉です。