太もも内転筋群の作用とトレーニング方法

  • 2019年7月22日
  • 2020年6月30日
  • 解剖学

太ももの内転筋群とは

太ももの筋肉は前側になる大腿四頭筋、後ろ側にあるハムストリングスが有名です。
トレーニングもその2つを鍛えることが多いのではないでしょうか?

太ももにはもう1つ『内転筋群』という重要な働きをする筋肉群があります。
あまり意識してトレーニングをしない、この『内転筋群』
実は非常に大切な筋肉なんです!

『内転筋群』は、足の悩み全般、骨格全体の不調に関係している可能性のある筋肉群で、太ももではインナーマッスルになります。
インナーマッスル『内転筋群』は、骨格を正しい位置に収めたり、体の代謝、内臓の働きに関係してきます。

おそらくですが、あまり知られていないのは「目立たないから」だと思います。

そう、この筋肉は太ももの内側にあるので、表面から見て目立ちません。
見落とされがちな原因ではないかと思います。

今回はこの『内転筋群』の場所と作用、簡単なトレーニング方法をご紹介します。

 

太もも内転筋群の特徴

内転筋群は、言葉からわかるとおり、太ももを内側に閉じる筋肉です。
座ったときにヒザを閉じる働きをします。

股関節を内転させる主力の筋肉。太ももの内側にあります。

筋肉のある場所が内ももなので、前から見ても、後ろから見ても目立つ位置にはありません。
前側の大腿四頭筋、後ろ側のハムストリングスのあいだに、しかも少し隠れているような感じで並んでいます。

『群』なので、5つの筋肉をまとめて『内転筋群』と呼ぶのですが、特徴の1つとして、「5つの筋肉の位置関係がわかりにくい」ということがあります。

おおざっぱにいうと、一番上にあるのが『恥骨筋』
その下に『長内転筋』があります。
後ろ側に『大内転筋』があって、長内転筋と大内転筋の間に『短内転筋』が挟まれています。
もう1つ『薄筋』は太ももから離れた位置(内側)にあって、脛骨(スネの骨)に着く二関節筋になります。

1つ1つ覚えると少し複雑なので、まとめて『内転筋群』としてわかっていればいいと思います。

 

太もも内転筋群の作用

重要な働きをする『内転筋群』
ここでその作用をご紹介します。

内転筋群の作用は、筋膜のつながりまで含めるととても多岐にわたります。

太ももを閉じる(股関節内転)

筋肉の走行から一番イメージしやすいのが、太ももを内側に閉じる運動をするということ。
座った時にヒザが開いて、足がくっついた位置になりやすい人は、内転筋群が働きにくくなっているかも。
日常生活ではあまり使われにくくて、使われなくても過ごせてしまいます。

内転筋群は、スクワットのような屈む動作で足が開かないように制御したり、サッカーのインサイドキック(足の内側で蹴る)動きで働きます。
横歩きなど、横方向へ動くような動作をスムーズにします。

足をまっすぐな位置に保つ(O脚、X脚を防ぐ)

内転筋群は、太ももの骨(大腿骨)と骨盤をつなぐ筋肉です。
内転筋群の強さ、柔軟性が保てれていると、骨盤に対して足がまっすぐな位置ををとりやすくなります。
内転筋群の働きが、O脚X脚を防ぐことにとても活躍してくれます。

さらに、筋膜のつながりで、ふくらはぎのインナーマッスルである後脛骨筋や足の指の筋肉にも影響が広がります。
ふくらはぎのインナーマッスルは、スネをまっすぐに保つ筋肉なので、足全体がまっすぐな位置を保つために他の筋肉も活性化してくれます。

骨盤の安定

立っている時、歩く時、足が地面に着いて固定されることになるので、その上に乗る骨盤が動く方になります。
内転筋群は骨盤を安定させることに働きます。(特に位置どりに影響)
内転筋群の股関節を内転させる作用は、反対に外転させる作用の中臀筋や小臀筋とバランスをとりながら骨盤を支えます。

歩くときは片足で体を支えるタイミングがあります。
その時、中臀筋が骨盤を支えるというのは知られていますが、その中臀筋とバランスをとって制御しているのが内転筋群になります。

しかも、体の中心軸の近くにあるのは内転筋群なので、とても繊細にバランスを取っていると言えます。

内臓の働きを良くする

内転筋の筋膜は、骨盤底筋、腰筋や背骨の前側、横隔膜とつながりがあります。
間接的にではありますが、内臓を囲む筋肉や内臓を包む膜組織に内転筋群は影響すると言えます。

呼吸が深くなる

横隔膜からさらに上につながりを広げると、肋骨の内側の筋膜につながっていきます。
これも間接的にですが、呼吸が楽になったり深まります。
ストレスの緩和、良い眠りにつながることが想像できます。

良い姿勢を作る

先ほど骨盤の安定に影響することをご紹介したのですが、骨盤の安定はその上に乗る骨格が楽になります。
背骨や肩甲骨の安定やリラックスとなり、腰痛や肩こりの緩和につながる可能性があります。

また、背骨の前側から、喉、顎にもつながっていくので、体の中心で骨格の位置どりを調整するための、1つとして内転筋群は働きます。

そのつながりの中では一番エクササイズしやすい部分なので、骨格の調整にオススメな部位です。

基礎代謝の向上

内転筋群はインナーマッスルなので、酸素や脂肪組織をエネルギーとして収縮する割合が多い筋肉です。
内転筋群自体が体の中でも大きな筋肉の1つなのですが、他のインナーマッスルにも連動しています。
骨格が整うと共に、効率的に身体の代謝を向上させてくれることがわかります。

しかも、一度働き始めると日常的に活動しやすくなるので、代謝を向上させることに大きく貢献すると言えます。

 

 

太もも内転筋群をトレーニングすることがオススメな人

それでは、内転筋群の作用から、トレーニングすることで得られるメリットを考えてみましょう。
いろいろな筋肉がある中で、内転筋群をトレーニングの中に取り入れるかの参考にしてみてください。

姿勢を良くしたい人

内転筋群は骨盤を安定させます。そして、骨格を良い位置に収めることに活躍してくれます。
そして、内転筋群は他のインナーマッスルや膜組織とつながりがあるので、姿勢を支えるための他の部位にも影響が大きい筋肉。
時間はかかりますが、姿勢が良くなり、肩こりや腰痛の予防にもなります。

運動のパフォーマンス向上させたい人

骨格が安定し、良い位置に整うことで、バランス能力が向上します。
そして、骨格という土台が安定することで、主に表層にあるアウターマッスルが働きやすくなります。
パフォーマンスが向上し、運動で怪我をしにくくなります。

柔軟性を高めたい人

骨盤の安定は、その上に乗る背骨が安定するということです。
過剰な緊張が軽減して、しなやかに動きやすいインナーマッスルとなります。
緊張が抜けて動けるようになると、インナーマッスルの柔軟性が向上しやすいです。

ダイエットをしたい人

基礎代謝を向上させる内転筋群。
内転筋群が働くようになると脂肪を燃焼させてくれます。
先ほども言いましたが、他のインナーマッスルも働きやすくなるので、日常生活での基礎代謝も向上しやすくなります。

O脚、X脚の人

内転作用のある筋肉なので、太ももの内転、外転に直接関係があります。
O脚、X脚。前から見たときの足の形を整えたい人にオススメです。

 

便秘など、内臓に不調のある人

内転筋群は間接的に、お腹の内臓を包む膜組織に関係があるので、内臓系の不調がある人にもオススメです。
さらに、背骨の動きも良くなりやすいので、神経からくる内臓の不調にも良い影響があります。

 

 

 

 

太もも内転筋群の筋トレ方法

内転筋群をトレーニングする方法をご紹介します。

初心者、トレーニングを始めたばかりの人は軽い負荷から始めます。内転筋群は最初は収縮を感じにくいかもしれません。

コツはトレーニングの後に仰向けで十分な休息をとることです。
1つトレーニングを行なった後に、時間を長めに仰向けでお休みをすると、背骨や内臓など、他の連動する部分に影響がじわじわと広がっていくのでオススメです。

内転筋群は、時間をかけて気長に続けていく必要がある部分なので、そのことを念頭にトレーニングをしてみてください。

側臥位でのトレーニング

①左側を下にして、横向きで寝ます。肘を立てて頭を支えても良いです。
②右足膝を天井の方向に立てて、足を前側に置きます。
③下にある左足を床から持ち上げます。この時内転筋が働いていることを意識して感じるようにします。
*個人差はあると思いますが、負荷は大きくないので回数を多めに実践します。
*反対側も同じように実践します。

仰向けでのトレーニング

①肩幅に足を開いて置きます。
②右足を左足より10cmくらい上に向かって、外旋させながら持ち上げます。(足の内側、内くるぶしが天井を向くように回転させながら)内転筋群が働いているのを意識しながら行います。
*負荷は大きくないので回数を多めに実践します。
*反対側も同じように実践します。

ワイドスクワット

①つま先を少し外側に向けて、肩幅よりも横に大きく足を開きます。
②つま先の方向に膝が曲がるようにして、息を吐きながら腰を下ろします。(負荷の強さは膝を曲げる角度で調整します。最高で90度くらいでとどめます)
③少しだけキープして、息を吸いながら膝を伸ばして腰を上げていきます。
④目安は20回くらい。個人の筋力に合わせて、回数、セット数を調整します。
*ゆっくり腰を下げて、ゆっくりと上がるようにします。
*スクワットの時に内転筋群を意識します。

 

 

太もも内転筋群のストレッチ方法

床に座りながらストレッチ

①左足はあぐらをかくような形で膝を曲げて、右足は膝を伸ばして足の内側を床に着けます。
②左側を向き、両手を床について、左を向いたまま上体を起こします。
③右足の内転筋群がやさしく伸びている状態で、呼吸をしながら30秒ほどキープします。

床に寝ながらストレッチ

①床に仰向けになり、足の後ろ側と、できればお尻を壁につきます。
②壁に添わせながら両足を開きます。
③内転筋群を収縮させ、少しだけ閉じてから、再び開くことを繰り返します。(収縮の後の弛緩を使って筋肉を伸ばしていきます)
④最後は両足を開いたまま30秒ほどキープします。
*開いた位置で収縮することで、内転筋群が伸びた位置での筋トレ効果もあります。