骨折に後遺症はあるか
脛骨腓骨骨折の経験から、後遺症の体験について考え直してみたいと思います。
結論から言うと、大なり小なり後遺症はあります。
怪我の後からすぐに出てくるわかりやすいものもあれば、数年かけて形を変えていくものまで、いろいろとあります。
僕の場合は両足別々の手術をして、体感として比較できたことが勉強になりました。
作業療法士としてリハビリの仕事をしているので、たくさんの方の経験からも教えてもらったことがあります。みんなに共通するケアの仕方も学ばせてもらえています。
未然に防ぐことができること、回復するための助けになることなどをまとめてみました。(考えられる範囲で)
経験したこと
左足脛骨腓骨骨折をして1年以上経過しました。痛みは無くなって、普通に生活できています。
軽いランニングもできるようになって、順調に回復してくれたことに感謝しています。
反対の右足も、10年以上前に手術をしています。
右足は骨棘除去術。骨を削りました。
両足を手術して、比べてみて感じることがあります。
右足と左足の感覚が全然違うということ。
今現在は、10年以上前に手術をした右足の方が支えにくく、今回骨折した左足の方が調子が良いです。
どのような手術をしたのかを比べて、なぜ後遺症があるのか、なぜ右足の方が今だに支えが弱いのか、後遺症がないように、自分でできるケアはあるのか、などを考えるきっかけになりました。
手術後の比較
いろいろな骨折の種類、骨折部位はありますが、僕が経験した手術の比較をしてみます。
【右足】部位;足首にかかる手術 種類;骨棘除去術
【左足】部位;脛 種類;脛骨腓骨骨折、螺旋骨折
左足の脛骨腓骨骨折をした今回、先生から
「関節にかからなくて良かったですね」
「関節にかかっていないので後遺症は心配ないでしょう」などと言われました。
この言葉からの推測、自分の足の調子を比較してみると、おそらく『関節にかかるか、かからないか』がとても大きく予後を左右することになりそうです。
右足の骨棘除去手術とその後の経過
右足の手術は踵にできた骨棘を削る手術でした。足首を伸ばした時外くるぶしの後ろに痛みがあって、骨と骨がぶつかっていたらしいです。そのぶつかっている部分のかかとの骨を削りました。
手術はアキレス腱の内側から切開して、外側の踵の骨を削りました。なので、傷口は内側にあります。
足首の関節にかかる手術だったので、しばらく足首を伸ばしきれなかったことを思い出します。
今は側からみると、普通に歩いているときには全然わからないくらいだと思うのですが、踵の外側から身体の右後面、首の後ろまで力が入りません。
一時は右側の歯茎からも出血が多かったです。
身体は筋膜で全身が覆われていて、つながりや連動があるので、右足の手術をしてからは右側全体の力が入りにくくて、荷重時に支えることができません。
特にスポーツをしている時に右足を軸にして支持できません。
今回左足を骨折したときも、右足の支えが十分できずに左足に大きく荷重したときでした。
左足は脛骨腓骨骨折 手術後一年経過
左足脛骨は中間くらいから捻れて骨折。腓骨は上の方の骨折です。
内くるぶしからスネの半分くらいまで切開して、プレートで固定しました。
幸いなことに関節面にはかからなくて、関節の動きに問題はありません。
今現在は走ると若干痛みがある程度で、大きな問題があるようには感じません。
強いていうなら、管が入っていたスネの前側に癒着があることと、切開したのが内側なので少しだけ親指側に力が入りにくいように感じることです。
でももう右足に比べると支えは強いですし、動かしたとき、荷重したときの安定感は強くなっています。
多分ですが、右足が支えられない分を左足が受けて疲労骨折したのだと思います。
手術後一年のケアを比較
・右足
10年前の右足の手術の時はリハビリはありませんでした。手術後サポーターをしばらくつけて、すぐに日常生活に戻りました。
固定や安静も特にありませんでした。
・左足
左足の脛骨腓骨骨折は手術後リハビリを3ヶ月ほど継続。リハビリ担当の先生と自主訓練に関しても相談しながら取り組んでいました。
手術の瘢痕に対してもオイルを塗布してマッサージしていました。今比較すると、傷の硬さが全然右と左では違うので、ケアしていたことは生かされていたとわかります。
現在は走る練習をしています。靴には足のアーチを補助するためにインソールを入れています。
ヨガは4年ほど前から始めました。元々の体の硬さがあるので不恰好ながらアーサナをとっていましたが、身体だけでなくいろいろな気づきや変化があります。
特に左足の骨折中は立てなかったので、背骨のシークエンスを多くしていました。今はそれがためになり、骨折前よりも体全体としては快適です。ヨガは万能ではないか?とさえ思えてきます。
足の骨折、手術の後遺症を残さないためにできるケア
詳しく振り返ってみました。
手術の種類や部位の違いもありますが、自分でしてきたケアも全然違うことがわかります。
手術をした後のことなんてどうなるかわかりません。ケアはその時わかっている範囲でできることをするしかないです。
アイデアが一つでも増えるように参考にしてみてください。
① リハビリをすること
怪我や手術で安静にした後は、機能が急激に低下します。関節が固まって可動範囲に制限が出たり、筋力が低下して足が細くなります。
関節に関しては怪我をしている最中から動かせる部分は動かして、なるべく固まらないように予防しておくことが重要です。足首が動かせなかったら足の指や膝など他の部分を動かしておきます。
低下した機能を取り戻すよりも、機能低下しないように予防するほうが後々楽です。
関節を動かすと筋肉も使うことになります。最大筋力が低下したとしても、滑走性を保つことになるので動かしておくことは大事です。
むくみの予防にもなります。
できれば先生やリハビリのセラピストにどんなことをすればいいのか相談して、その時期に合わせた適切なことを実践すると良いです。
時期によっては安静もリハビリのうちですが、「何もしなくていい」ということはありません。
② 傷口のケアをすること
手術の瘢痕や傷口がある場合は、皮膚や筋膜が癒着したり硬くなったりします。
その部分はいずれ支点になる可能性があります。
膜組織に関しては、癒着やつっぱり感があると全身の構造をひっぱって、数年かけて身体の形を変化させていきます。
すごくゆっくりなので気がつきにくいですが、怪我や手術の数年後の腰痛が実は数年前の癒着に原因があることも少なくありません。
1. まずは傷口を綺麗に治すことを考えます。
靴下や靴などの摩擦、刺激は極力減らすようにして、肥厚性瘢痕を予防します。
2. 抜糸後は傷口がなるべく広がらないように専用のテープなどで押さえることをお勧めします。(皮膚が負けないようであれば)
3. 傷口が安定して炎症が治まったときに触れてみて、他の部分よりも硬さや滑りにくさがあればマッサージをします。
力を入れることはありません。傷口のつっぱり感がなくなるようにします。時間をかけて丁寧に行うようにします。
むくみが続いたなら傷口の周りも滑りにくいかもしれません。
マッサージにオイルを使うとより早く柔軟さが出てくるかもしれないので、お勧めです。
数十年前の瘢痕はもう関係ないと思っていることもありますが、年月が経っていてもマッサージする価値はあります。
特に女性は見えない箇所でも傷跡を気にされている場合が多いようです。動きが良くなったことよりも柔らかく見た目が綺麗になったことを喜ばれる人が多いです。
③ 構造を知ること
特に関節にかかるような骨折や関節の構造にトラブルがある場合は、一度解剖学などで構造を見てみることをお勧めします。
足首は部分を指す言葉。距腿関節、脛腓関節でできていて、二つの関節は動き方が違います。
足部を含めると距骨下関節、横足根関節(ショパール関節)、足根間関節など、たくさんの集まりです。
絵でもいいので見てみると参考になるかもしれません。動かすときの意識が変わる意外な発見があるかもしれません。
④ インソールも試してみる
足部のアーチは非常に繊細なバランスで成り立っています。足にかかる骨折や怪我では、このアーチのバランスに微妙な変化があるかもしれません。すると全ての骨格バランスも保ちにくくなります。
インソールは歩くたびにアーチ形状を補助してくれるので、自然にリハビリにもなってくれます。一度セッティングすると、その後特に努力する必要もないので試してみる価値はあると思います。
僕の経験ですが、両足の感覚の違いは、インソールがバランスを確認することに役立ってくれています。自分でまっすぐ左右対称だと思っている位置が実は違うこともあります。
特にランニングするときは足の疲労具合や地面に接地した時の感じがすごくいいですし、足指の踏ん張りが効きやすくなりました。
自分のする運動や足の形に会うインソールがあると思うのですが、日常生活、ウォーキングにはバネインソールがお勧め。
いろいろ試したのですが、一番万能で、万人に合わせやすいと思います。
⑤ 筋肉に合わせた筋トレをする
怪我をして安静にしていると筋肉が落ちて足が細くなります。それを取り戻すためには筋力トレーニングがある程度必要です。
でも鍛え方は筋肉の場所や質によって違いがあるので、自分の足の状態によってちょっと方法を変える必要があります。
例1;ジャンプするとか蹴る力が落ちたという場合は、表面的なアウターマッスルを鍛える必要があるので、ある程度負荷を与えながら筋力訓練を実施する必要があります。回数は少なくてもいいので負荷をかけていく運動。
例2;関節の不安定感、立ったときに安定しない感じがあるときはより深部のインナーマッスルが働きにくくなっているはずなので、負荷は小さく時間をかけてトレーニングする必要があります。回数を多く(または時間をかけて)低負荷で運動。
手術や怪我ではインナーマッスルが働かない状態になることの方が多いと思います。根気は入りますが、丁寧に時間をかけて低負荷から鍛えていくことをお勧めします。
特に関節にかかる怪我の場合は関節の軌道が変化したり、収縮すること自体ができない筋肉が出てくるかもしれません。傷口の弾力をだすマッサージ、構造を少し理解してトレーニングすることも一緒に実践しながらトレーニングすると効果的です。
⑤ 全身を整える
怪我した箇所をリハビリすることは必要ですが、「筋力が付きにくい」「バランスが崩れている」というときは、背骨の歪みや姿勢の悪さなどが影響していることがあります。
全身は筋膜組織でつながっていて連動しているので、できれば体全体を整えていくことが理想的。
特に背骨は身体の軸になる部分。患部と一緒にトレーニングしてみてください。
⑥ 食事や栄養摂取
身体を作り上げるためには栄養が大事です。バランスよく食べることは当たり前ですが重要なことです。
身体の材料になるタンパク質は不足しないようにしましょう。
怪我をしないために
怪我をしてしまったら治すプロセスを踏んでいくことになりますが、できれば怪我は予防したいです。
偶発的な出来事は避けようがありませんが、僕のような骨折は避けられるかもしれません。
疲労骨折や怪我を予防することなどのちょっとした情報をご紹介します。
骨は運動に合うように変化する
骨は機械的な刺激に対して強くなります。
例えば歩く時に地面からの刺激が骨に伝わると、その刺激に対しての方向に強くなるように骨を作り上げていきます。そして、その刺激に対しての強さを確保しつつもできるだけ軽くなるように空間を作ります。
ということは、何か特別な運動をしている人は、その運動の刺激が伝わる方向に骨は強くなっていくということです。
このように体は負荷に対して徐々に強くなっていくので、最初から激しく運動したり、無理をするのは怪我につながる危険があります。
徐々に負荷は上げていくこと、「徐々に」がポイントです。
筋肉は柔軟性と強さ両方が大事
一流のスポーツ選手の筋肉は、普段は柔らかくて力を入れると瞬時に硬く強く収縮できるそうです。なので、怪我の治りも一般の人よりも早いんです。
例えば足を骨折して2週間固定したとします。関節は制限が出て最初は動かしにくいです。でも、元々の筋肉や結合組織が柔軟な人は関節がそもそも硬くなりにくくて戻るのも早い。反対に運動不足で組織が硬いと、関節は硬くなり制限が残ってしまいやすいんです。
同じ怪我をしても、元々の身体の状態が治ることに影響しているということ。術前リハビリもあるくらいなので、身体の状態を健康に保っていることや運動を習慣にしていることは怪我の回復にも影響します。
代謝の促進や怪我の予防にも運動は大事なことです。
全体の連動した動きが怪我の予防になる
身体は連動して動く構造になっています。
例えば、背骨や股関節が硬くて運動していると、膝が過剰に使われることになって膝を痛めてしまう、などということになりがち。
身体は全部の動きのトータルで成り立っているので、全身をバランスよく鍛えて、柔軟にしておくことが怪我や痛みの予防になります。
よく寝て、よく食べる
睡眠時間の理想は1日8時間らしいです。疲労をためていると怪我や病気につながります。疲れている時にハードな運動は危険です。
よく食べるとはたくさん食べることではありません。きちんとした栄養を摂るということ。栄養不足、高カロリーにならないように日頃から食事に気をつけておくのが大事です。
まとめ
怪我をしたことが、体のことを考えるきっかけになることもあります。
いついかなる時に「知りたいなー」とか「気をつけよう」と思い始めるかは人それぞれ。
普通に体を鍛えることと、怪我や手術をした後に身体を整えていくプロセスは少し違いがあると思いますので、自分に合った方法で、工夫をして実践していけるといいと思います。
参考になれば幸いです。