母趾内転筋の特徴と作用 【足の横アーチを作る筋肉】

母趾内転筋とは

母趾内転筋は、足の横アーチを作るための直接的な筋肉で、足底で最も深層にあります。
足の中だけで完結する内在筋になります。

英語では【adductor hallucis muscle】
adductorr=『正中位に近づける』
hallucis=『母趾』
母趾を正中位に近づける筋肉という意味です。

特徴

特徴的なのは『横頭』と『斜頭』があるということ。
そして面白いことに、『横頭』は第2趾には付着しなくて、『斜頭』は第5趾(小趾)には付着しないということです。
足の構造の神秘さを象徴するような筋肉ですね。

母指内転筋は足の横アーチを作る上でとても重要な働きをする筋肉です。
うまく機能すると、歩くだけでもしっかりと働いてくれます。(日常的に訓練されていることになります)
でも筋肉が短縮して固くなり、収縮しなくなると大変です。
日常では働きにくくなっているのでケアする必要があるのですが、鍛えることが比較的難しい筋肉です。
機能し始めるまで根気よく練習する必要があるし、他の筋肉との調和をとりながら気長に練習することが必要です。

起始と停止

【横頭】
起始 ー 第3〜5趾の中足趾節関節の関節包と靭帯
停止 ー 母趾基節骨底の外側縁(外側種子骨を介して停止)

【斜頭】
起始 ー 第2〜4趾の中足骨底、(長腓骨筋腱、外側楔状骨にも付着の可能性)
停止 ー 母趾基節骨底の外側縁(外側種子骨を介して停止)

支配神経

外側足底神経、深枝  S2-S3

働き

①母趾のMTP関節を屈曲する
②母趾を内転する
③横頭は横足弓(足の横アーチ)を保持する
④斜頭は縦足弓(足の縦アーチ)を保持する

横頭は母趾を小趾側に近づける内転運動に関わり、中足骨を中央へ引き寄せて横アーチを形成します。
斜頭は斜めに走行している筋肉。縦のアーチにも関与、特に内側縦アーチの形成に貢献しています。楔状骨や立方骨の安定にも関与します。

能力への貢献では
①立位バランスの向上
②衝撃を吸収する
③体重を支持する
④骨格の位置関係への関わり
などがあります。

母趾内転筋の作用

母趾を内転する

母趾内転筋は、足の親指を内転します。
内転方向に大きく動くということはないので、床をつかむような運動で働きます。
母趾を内側に寄せる運動と共に小趾も中心に寄せる方向に引っ張るので、結果的に横のアーチができあがります。

足の横アーチ、縦アーチの形成し、立位バランスに貢献

横頭は中足骨の遠位にある筋肉で、中足趾節関節が横に並んでいる部分でアーチを作ります。
斜頭は足の中央(楔状骨付近)から母趾の基節骨へとつながり、縦のアーチを作ることに貢献します。特に内側のアーチに関わります。
このアーチを形成することで、前後左右の微妙な揺れを感知して、立位でバランスをとることに働いています。

骨格の位置関係を整え支持する

横頭も斜頭も足部の骨をたくさんまたぎます。
アーチを形成するということは、その位置関係(アライメント)を保つことに作用しているということ。
足部の位置関係はその上にのる全ての骨格の位置どりに影響を与えます。
正しい姿勢で体を支えることに作用しています。
また、凸凹道や平坦でない場所で運動するときに、足部の位置関係を保ち、床と身体のバランスを調整するために活躍します。

衝撃を吸収する

足のアーチは歩くとき、走るときに地面の衝撃を吸収するために作用しています。また、吸収するために発生した張力は、次のアクションのための反発する力となります。天然のスプリングのような作用をします。
母趾内転筋はこの働きをサポートします。

 母趾内転筋のトレーニング

足部のアーチには固有筋が大きく関わります。
特に母趾内転筋は筋力低下すると、開張足になります。
それが長く続くと横中趾靭帯が緩んで治りにくくなります。
横頭は緩んでいるけど、斜頭は拘縮、短縮しているということもあります。
トレーニングは筋力トレーニングとマッサージや竹踏みなどを併用すると効果的です。

筋力トレーニング(横頭)

①椅子に腰かけて、片足を前に出します。
②前足部がアーチを描くように丸めます。10回くらいアーチを作ったり、緩めたりを繰り返します。
③母趾側から小趾側にアーチを作るように動かして、小趾側から母趾側にアーチを描くように動かして、行ったり来たりします。
*足趾の先の方ではなくて、横アーチを意識してトレーニングします。

筋力トレーニング(横頭)

足趾に挟むセパレーターを使用。
①セパレーターで足趾を広げます。
②開いた足趾で、趾の間を狭くするように挟んでは緩めるを繰り返します。
*足趾の先の方ではなくて、横アーチを意識してトレーニングします。

筋力トレーニング(斜頭)

①母趾のMP関節を踵の小趾側に向かって曲げます。

筋肉は足趾ではなく足部にあるので、運動するときは足のアーチを意識して行いましょう。

マッサージ

①椅子に腰かけます。
②斜頭の筋肉の走行に沿って垂直に親指でマッサージします。筋肉は深部にあるので、親指で少し圧して深部をイメージしながらマッサージをします。
③横頭は両手で母趾側、小趾側をつかんで、両手の親指で3趾、4趾を押して横アーチを作ります。筋肉の走行と垂直に親指を動かしてマッサージをします。

マッサージ②

①椅子に腰かけて、ゴルフボールを足裏で転がしてマッサージをします。
*そのほか、竹踏みなど

ストレッチ

セパレーターや足趾が開くソックスなどを使用するのが効果的です。
運動ではストレッチしにくい筋肉。
マッサージやアイテムの使用がオススメです。
*セパレーターを使用した状態で筋力トレーニングも効果的です。

足のアーチをサポートしてくれる靴下などもあるので、外反母趾や開張足になって長い人にはアイテムを使うのがおすすめです。