長母趾屈筋の作用とトレーニング方法 【スタートダッシュを加速!バネの役割をする筋肉】

  • 2019年3月9日
  • 2019年3月18日
  • 足部

長母趾屈筋とは

長母趾屈筋は下腿を支える、ふくらはぎの深層の筋肉です。
腓腹筋、ヒラメ筋の裏側にあって、表面からは見えません。
腓骨からふくらはぎの奥を通り、内果の後ろを通過して、足の裏内側から母趾に長く伸びる筋肉。

綺麗に歩くためには、最終的に母趾でスムーズに地面をけることが必要。その時に活躍します。
結果として、長母趾屈筋が効率よく働くことは、たくましくて綺麗なふくらはぎを作ります。

英語では【flexor hallucis longus muscle】
flexor=屈曲する
halluc=母趾
longus=長い
という意味です。

特徴

脛骨の後ろにあり、ヒラメ筋のすぐ裏側にあります。
母趾1本に伸びるのですが、他の4趾を動かす長趾屈筋よりも大きい筋肉です。比較的厚い筋腹をしています。
とても強くて、足底のバネ作用の大半を担っていて、”スタートダッシュ筋”と呼ばれることもあります。
腓骨から内果の後ろ下側を通って、母趾に到達するので、内果の部分で大きくカーブすることになります。それがテコの原理となって大きな力を生むことに役立ちます。

歩く時は母趾が床から離れる最後の部分になります。母趾の指先(末節骨)に付着する筋肉なので、最後までこの筋肉が働くことになります。
『スタートダッシュの力強さ』『歩く時のしなやかさ』をもたらす筋肉です。

また、筋肉の走行から足の内反(回外)することにも働き、他の足趾が屈曲することを補助するとも考えられています。

もう1つ大きな特徴として、内側縦アーチ(土踏まず)を保つことに対して貢献度が大きいことがあります。
下腿を支え、位置関係を保ち、扁平足にならないようにも活躍します。

以上の役割から、機能的にも大活躍の筋肉です。
結果として、ふくらはぎや足の形、見た目を綺麗にすることにもなります。

起始と停止

起始 ー 腓骨後面下2/3、隣で接する骨間膜、下腿後筋間中隔
停止 ー 母趾の末節骨

神経支配

脛骨神経 ー L5ーS2

働き

①足首(距腿関節)の底屈
②距骨下関節の回外(内反)
③母趾屈曲
④内側縦のアーチ形成に作用する
⑤スタートダッシュのときに推進力を生むためのバネの働き

 

長母趾屈筋の作用

足部の内側縦アーチ形成に作用する

他の足部内在筋のともに足のアーチを形成することに貢献します。
特に長母趾屈筋は内側縦アーチの保持に大きく貢献。
それは、下腿の支えが安定すること、骨格のアライメント(位置関係)を整えるために作用していることを意味します。

スタートダッシュのときに推進力を生むためのバネの働き

歩行や走行の時は、踵のやや外側から接地して、母趾の先端で蹴りだすのが理想的な軌道です。
長母趾屈筋は唯一母趾の末節骨まで腱が至る筋肉。

歩行や走行で足底が接地すると、足部は回内(外反)運動をしていくため、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋、ヒラメ筋の回外筋は制御のために働きます。
そのとき、足の構造を安定させるため、内側縦アーチの安定化と衝撃吸収のためにも作用します。
足底が接地した後は下腿が前に倒れていきます。その時足関節底屈筋である、後脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋、長趾屈筋、長母趾屈筋、長腓骨筋、短腓骨筋が遠心性収縮により下腿の前傾を制御します。

長母趾屈筋と長趾屈筋は下腿の前傾を制御しながら、伸張されることで緊張が高まります。それをバネのようにためて推進力に変えます。
長母趾屈筋は、前足部支持から足趾の支持で、MP関節が反る(背屈する)とき、内側縦アーチが挙上します。
その時、長母趾屈筋も伸張されながら緊張し足部を制御しながら推進力を蓄え、最終的に地面から離れる時スタートダッシュの力になります。

足首の底屈、距骨下関節の回外(内反)

長母趾屈筋は内くるぶしの後ろ側を通過します。
その走行から、距腿関節(足首)の底屈に関わり、距骨下関節の内反にも作用します。

母趾を屈曲する

長母趾屈筋は腓骨の後ろ側から始まり、母趾の指先まで(末節骨まで)腱が届きます。
足の裏の筋肉(内在筋)を通り越す、長い筋肉。
足首の底屈も合わせて運動すると、バレリーナが足を伸ばしているようなイメージになります。
運動の順番は、足趾の屈曲→足首の底屈になります。

 

 

筋力トレーニング方法

足趾を曲げる運動

足趾を先まで強く握る。足底に行くと腱なので、ふくらはぎの奥で収縮をイメージできると効果的。

タオルギャザー

タオルがある場合は、腰かけて、足の下にタオルを敷いて、足の指でタオルを引き寄せてくる。

足趾を曲げてから足首を伸ばす

①母趾を3割くらいの力で握る。
②母趾を握ったまま足首を伸ばしていく
③母趾を握り、足首を伸ばし、「もういかないな」というところまできたら、ふくらはぎの奥の筋肉の収縮を意識する。(意識的に収縮させてもいいし、意識するだけでも良い)
*長母趾屈筋は足の指先の骨(末節骨)まで腱が伸びるので、母趾の屈曲と足首の底屈両方を同時に行うことができる筋肉。運動の質的に足趾の屈曲を先に起こします。

下腿を前に倒し体を支える運動

①母趾を遠くのに伸ばして立位をとる。
②足のアーチを意識的に作り(内在筋を3割程度で収縮させ)土台を安定させる。
③遠くに置いた母趾がしっかりと地面についていることを意識して、脛から前傾する。ふくらはぎの奥に緊張、つっぱり感、収縮を感じたまま7秒キープする。
④ゆっくりと直立に戻って一度リラックスする。
*7秒以上実践してもトレーニング効果は上がらないという研究結果もあるので、10秒程度を数回続けるといいと思います。
*長母趾屈筋は伸びながら働き(遠心性収縮)、下腿が倒れないように制御する練習です。

つま先立ち

①足の指を遠くのに伸ばして立位をとる。
②足のアーチを意識的に作り(内在筋を3割程度で収縮させ)土台を安定させる。
③遠くに置いた母趾の指先もしっかりと地面についていることを確認して、踵を持ち上げるように意識をする。ふくらはぎの奥で収縮を感じれば、実際に踵が持ち上がらなくても長母趾屈筋は収縮している。
④さらに長母趾屈筋を強く収縮させるためには、母趾を意識して、素早く踵を持ち上げる。

ランニング

母趾で床を蹴るように意識をしてランニングをする。
できるならダッシュする。

 

ストレッチ方法

つま先を立てて正座のように座る

①足趾を立てて、正座のように座ります。踵の上にお尻を置く。
②足趾が伸びているのを感じながら、足首も背屈させていくと、よりストレッチされます。体を前へ倒して床に手をつき、手でお尻を後ろ方向へ誘導しても良い。

 

運動のコツ

実際の運動では足趾を曲げるよりも『下腿を支える運動』『つま先立ち』の方が実用的です。
長母趾屈筋を鍛えるには、母趾に意識を向けることが必要です。つま先立ちはできるだけ素早く行います。

足首の運動では足首を伸ばすと(底屈すると)足趾の屈曲が緩んでくる人もいるので、屈曲が緩まないようにキープしながら足首を底屈させます。最後はふくらはぎの奥で収縮を感じるのがコツです。