速筋線維と遅筋線維の特徴【トレーニング方法の違い】

筋肉は、大きく分けると「速筋線維」 と「遅筋線維」 があります。

同じ筋肉の中に、この2つの線維が同時に含まれています。
この2つが連携して、私たちは立ったり歩いたり、ジャンプしたり運動しています。

同じ筋繊維ですが、それぞれ特徴も鍛え方も違います。

・体を支えるために働くのが得意 … 「遅筋線維」
重いものを持つ、早く動くのが得意 … 「速筋線維」

筋肉の質の違いを知ると、より効果的なトレー二ングができるようになります。両方の運動を取り入れて、バランスよく体を整えていきましょう。

本記事では、2つの筋線維の違いと、トレーニングの仕方について書いていきます。

遅筋線維

特徴

姿勢を保つ、関節を支える、
微妙なバランスを保つ時に働く筋肉。
長時間活動できて、疲労しにくい
のが特徴です。

座っているだけでも体を支えるために働いています。
遅筋線維は身体の土台になって、速筋が働きやすい環境になるような役割です。

いわゆるインナーマッスル(深層筋)は、主に遅筋線維の働きによって活動する筋肉です。
全筋肉量の70〜80%が遅筋線維と言われています。

この筋肉は「拘縮」「短縮」「硬化」「筋緊張亢進」する傾向にあります。

つまり、硬くなりやすいんです。日常でもいつも働いている筋線維なのでいつも活動しているということが要因の一つです。ストレスによっても影響を受けやすいといわれています。

硬くなると関節の動きを妨げたり、隙間が狭くなります。
運動のパフォーマンス、しなやかさが低下します。

 

鍛え方

トレーニングは時間をかけてじっくりと行うようなスタイルになります。

① 軽い負荷で回数を多くトレーニングする
② 時間をかけてゆっくり運動する
③ 求心性収縮をする
④ 微細な収縮運動
⑤ ストレッチ

これらの運動で、効果的に鍛えることができます。
繊細なエクササイズなので速筋線維よりも鍛えるのが難しいです。

解剖学の知識があったほうが効果的に行えると思います。意識と集中力を持続することでより効果的になります。

 

遅筋の主なトレーニング方法

スポーツをする人にとっても鍛える価値があります。(スポーツ選手もヨガを取り入れていますよね)

  • ウォーキング
  • ランニング
  • 太極拳
  • ヨガ

鍛えるメリット

・しなやかでバランスの良い体になる
・マラソンなど、長時間の運動で耐久力が上がる
・ダイエット効果(脂肪をエネルギーに利用できるようになる)
・ケガをしにくくなる

筋肥大はあまりしません。
インナーマッスルを柔軟に鍛えることができれば、しなやかでバランスの良い運動パフォーマンスを獲得できます。

 

速筋線維

特徴

重いものを持ち上げたり、瞬発的に力を発揮するときに働く筋肉。

普段の日常生活ではあまり使われないので、ジムに行ったり運動したり、意識的に鍛える必要があります。

この筋肉は、一般的な筋力トレーニングで鍛えることができます。
でも鍛えないと「弱化」「弛緩」「萎縮」が起こる傾向があります。

特徴を理解した上でトレーニングしていくことが効果的です。

 

鍛え方

① 重いものを持つ(強い負荷をかけるような運動)
② 瞬発的な速い運動
③ 遠心性収縮

これらの運動で効果的に鍛えることができます。

 

速筋の主なトレーニング方法

速筋は力を使う、瞬発的な動きをすることで働きます。
少しハードなこと、負荷がかかるようなことを実践します。

筋力訓練をするときは、回数を多くは行えないくらいの強度(目安は10回以下)、遠心性収縮を取り入れるなどで実践します。

スポーツなどは瞬発的な動きをするいい機会です。どうせなら楽しめるものがいいと思います。

  • ジムでの筋力訓練
  • スポーツ全般

 

鍛えるメリットは

・筋肥大するので見せる体になる
(ボディビルダーのような)

・瞬発的な運動ができるようになることで、スポーツではパフォーマンスを発揮

 

筋線維のタイプ

より細かく分類すると筋線維は3種類あります。

 

1.  ST線維(タイプⅠ線維): 遅筋線維

・特徴 …  収縮速度は遅い
・耐久性があるので長時間の持続的な収縮が可能
・有酸素細胞呼吸でエネルギーを作る(酸素でエネルギー)

*瞬発的な力は発揮しないけど、身体を支えるなど長時間働いてくれる

 

2.  FTa線維(typeⅡa線維): 速筋線維

・特徴 …  遅筋線維、速筋線維の両方の性質が合わさっている
・収縮速度が早い
・比較的疲労もしにくい
・有酸素細胞呼吸でも無酸素解糖系でもエネルギーを生産できる

*ハイブリッドな筋肉

 

3.  FTb線維(typeⅡb線維): 速筋線維

・特徴 …  収縮速度が速い
・発揮する張力も大きい
・すぐに疲労する
・無酸素解糖系によってエネルギーを作る(糖質がエネルギー)

*短時間で瞬発的な運動に力を発揮するが、すぐに疲労してしまう

 

3種類の筋線維は一つの筋肉に混在しています。
「この筋肉は速筋線維でできています」「この筋肉は遅筋線維でできています」と、はっきりわかれているのではなくて、一つの筋肉に両方の線維が混じり合っています。

ただ、その”割合”は筋肉によって違います。

 

鍛えることで筋線維の質を変えられる?

筋線維の割合は、遺伝的な要因、個人差、人種の差によって違いがあるという研究もあれば、その筋肉が行う活動に関係があるという人もいます。

遺伝があるとすれば、例えば走る場合、マラソンが得意な人、短距離走が得意な人がいることになります。確かにありそうですね。

筋線維の変化ですが、速筋線維は遅筋線維にはならないし、遅筋線維は速筋線維にはならないとも言われていて、運動能力は先天的にある程度は影響されるかもしれません。

逆にトレーニングの仕方によって質は変化するという意見もあります。

明らかなのは、TypeⅡa線維はTypeⅡb線維に移行することはあるし、その逆もあるということです。これは間違いない。『速筋線維の質は変化する』

先天的なものはありますが、運動の仕方、鍛え方によって、ある程度筋線維の質をコントロールできるということ。トレーニングによる効果もあるということです。

スポーツをしている人は、その種目によって、鍛え方、運動の仕方を変えて、自分の体を作って行く必要があります。

健康でバランスの良い身体を作りたいのであれば、自分の身体の特徴を知って、適切に筋線維の質に合わせたトレーニングをすることが有効です。

 

まとめ

遅筋線維と速筋線維は両方が連携して運動のパフォーマンスを作っています。
人それぞれ個性があるので、自分にあったトレーニングを見つけられることが一番理想的。

調和のとれた身体は関節への負担がかからないことやパフォーマンスの向上だけでなく、怪我をしにくい身体になり、循環や消化活動も整います。

速筋線維と遅筋線維の両方の運動を取り入れて、バランスよく整えていきましょう。