順を追って進むトレーニングの原則【漸進性の原則】
ヨガをするときに目標や「こうなりたいという思い」が先に立ってしまうことがあります。
気持ちはそうかもしれませんが、身体は急に変化することはありません。
きちんとした生理学的な変化のペースがあります。
からだを壊してしまう大きな要因として『無理をしてしまう』『今の自分にとっては過負荷だった』ということがあります。すごく多いです。
今回【漸進性の原則】というトレーニングの原則をご紹介します。
トレーニングの原則なのですがヨガでも当てはまります。
ときにはチャレンジも必要ですが、本当に必要なことは『自分を知って適切な一歩を踏めること』、、。
そしてその一歩は一人一人タイミングもやりかたも違います。
トレーニングの原則の中で一番重要かもしれない、この漸進性の原則。
ひとりひとりのプロセスに自分なりのストーリーがあります。
漸進性の原則とは
トレーニングを効果的に行うための原則の1つ【漸進性の原則】
トレーニングをするとき、やみくもにやるのは危険です。自分にとって適切な負荷、回数などを調整して行うほうが効果的で、そして、それは『今の自分にとって一歩レベルを上げた設定』にするということ。
『漸進』とは、『順を追って進むこと』『段階的に少しずつ進んでいくこと』という意味です。
筋トレでいえば、いきなり重い負荷をかけるのではなくて、最初は軽い負荷から始めて、慣れてきたら少しずつ負荷を上げていくことで、身体を傷めることなく適切に強くしていける、ということになります。
大きすぎる負荷は、オーバートレーニング(疲弊や過用)になるし、肉体へダメージを与えてしまうことにつながるかもしれません。
それは自分に対する暴力です。
漸進性の原則からトレーニングを考える
人は適応能力があるので、負荷を与えることで、その負荷に適応しようとして強くなっていきます。
その負荷の与えかたは段階を追ってです。
トレーニングでの負荷の増やし方
- 強度
例えばベンチプレスなら、40kgが持ち上げられるようになったら、次に45kgに設定する。というように少しずつ段階的に強度を強めていく - ボリューム
1セット20回することに慣れてきたら、1セット25回に増やす。
3セット20回することに慣れてきたら、4セットに増やす。というように回数を増やしていく。 - 可動域
動く範囲のこと。負荷をかけたときに動く範囲は少しずつひろげる - 頻度
している運動に慣れてきたら、頻度を増やす。
などなど、、。こんな感じです。
トレーニングに慣れてきたら変化、レベルアップを繰り返して、少しずつ今の自分にとって負荷があることを積み重ねていきます。
重要なのは強すぎてもいけないし、弱すぎても効果がないということ。設定が大切です。
漸進性の原則はヨガでも共通している
ヨガのポーズの練習の落とし穴
ヨガのポーズの中にはアクロバティックなものや『そんなかっこうできるか?』みたいなポーズもたくさんあります。
そしてそのポーズをとれている人を見るとかっこよくて憧れてしまいます。
『私もそのポーズがとれるようになりたい』
そこがすごく落とし穴です。
ついつい、ポーズの完成形(結果)を求めてしまい、オーバートレーニング(疲弊やか過用)になってしまいやすい。
そこで思い出して欲しいのが、【漸進性の原則】です。
『漸進』とは、『順を追って進むこと』『段階的に少しずつ進んでいくこと』という意味でした。
人にはその人の身体的な特性があり、
やりやすいポーズと難しく感じるポーズ
気持ちよく感じるポーズと苦しく感じるポーズ
などがあります。
この順を追ってすすむ進みかたはひとりひとりの身体に合わせたものでもあるので、自分なりのペースと手順があり、決して人と比べるものではありません。
痛みや張った感じなどは身体からの合図。
もしポーズが完成しなくても身体からの合図を読み取って、自分にとって適切な手順で進めていくことが重要です。
人の身体には適応能力があるので、少しずつ負荷を与えることによって、負荷に適応しようとしてくれます。
ポーズがきついと言われているアシュタンガヨガも、段階的に進んでいきます。師(グル)が『次の段階へ進んでいい時期だな』と見定めてくれて、進んでいきます。
インストラクターが言っている「身体が硬くてもできますよ」というのは、『その人に合わせた段階で実践してもいいのがヨガですよ』ということだと思います。
だから誰にでもできるんです。
ヨガのポーズを練習する安全な手順
それではヨガのポーズの進め方を【漸進性の原則】から考えてみます。
- 効率
まずは正しいフォーム、正しい軌道、適切なアライメントをきちんと確かめます。
体の姿勢が崩れて、無理やりポーズを完成させても、それは関節にとって過負荷です。どこかに負担がかかっています。(非常に多いです)
丁寧に自分の位置を確認してみましょう。だんだん身体が記憶してくれます。
ヨガのやり始め、初めて行うポーズは特にフォームを確認して、慣れてきたら少しずつ負荷を強めていきます。 - 可動域
可動域を広げることは大事です。これも少しずつ順を追って広げていきます。
ここで気をつけたいポイントがあります。広げた可動域にきちんと筋肉をつけること。広げた可動域に支える力が追いついていることです。
身体が硬い人がいきなり伸ばすと、伸びた部分の限界域にただ乗っているだけになってしまいます。筋肉や腱を痛めてしまうかもしれません。ブロックなどを使うのもいいです。
少しずつ可動域は広げて、広がった部分にも筋力をつけてから次の段階へ進むほうが安全です。 - 筋力の強度
ポーズによって筋力を使うポーズもあります。これも焦る必要はありません。慣れてくればそのポーズに適した筋力がついてきます。最初は短い時間、負荷を減らして段階的に進めていけます。 - 頻度
最初はポーズが完成しなくてもそれにチャレンジすると体は反応します。できないポーズがあったら「無理に急に」ではなく、「少しずつ毎日」というように強度よりも頻度を重視して進めていくと自然にできるようになってきます。 - ボリューム
体力や耐久性も急につくものではありません。慣れていないことには体力も使うし、ポーズやレッスンに慣れる準備が身体にも必要です。
休む時間も練習のうちと捉えてボリュームの設定も自分のペースに合わせます。
これらはヨガの種類、インストラクターによって、どれを重点的に鍛えることができるかが変わってくると思いますので、自分に合ったヨガを選んでいいと思います。
最初は物足りない、楽しくないと感じても、少しずつそこから進んでいくと、ポーズの気持ち良さや変化を感じやすくなります。
焦らず、比べず、一歩一歩進みます。
まとめ
トレーニングももちろんですが、ヨガのポーズもきちんとした身体の原則に従って進めていくことで、効果的に実践することができます。
ついつい、『がんばれば上達する』と思ってしまう傾向にありますが、がんばりかたを考えるときに漸進性の原則を思い出してください。
適切なヨガの練習は身体の不調を和らげ、動きやすくてバランスのとれた身体にを作り、心も軽くなっていきます。
身体にとって健全な手順を考えると、まずは効率(フォーム)を一番重要視してほしいです。関節や構造に負担の積み重ねがあるのは良くないです。
その次に可動域。動く範囲を確保すること。
次に、目的に合わせた鍛えたい要素に合わせて、強度、ボリューム、頻度、インターバルの時間を段階的に増やしていくことが、負担なく鍛えていく手順です。
身体構造に負担がかかることは、長い目で見ても怪我や病気につながります。
すごく重たいものを持てたら「やった!!」という達成感は得られやすいですが、それを求めてばかりだとゆくゆく負担になるかもしれません。
「順を追って丁寧に!!」といことを心がけるようにしてほしいです。
結果に執着しないこと。一歩ずつ進んでいきましょう。
自分のストーリーを作れますように。
余談ですが、、
筋肉だけでなく、骨にも漸進性の原則は当てはまります。
骨の強度も、少しずつその運動に適応してくれます。骨折に注意しましょう。