ウッターナアーサナの練習方法【立位体前屈を柔軟にするコツ】丁寧に時間をかけてコツコツと!

ウッターナアーサナ【立位体前屈】の特徴

ウッターナアーサナ【立位体前屈】は、股関節を大きく屈曲して、体を二つ折りにするポーズです。

このポーズを【前屈】と日本語にすると効果が半減。
英語、サンスクリット語のほうが適しているように思います。

ウッターナアーサナ。
ウトゥは『入念』、ターナは『伸ばす』『広げる』という意味。

背中側を、『入念に伸ばすポーズ』です。
ポーズの名前は「後ろ側を伸ばす」という意味。

日本語にすると「前屈」体を前方に倒していくので、前側に意識が向くかもしれません。
でもこれだと、前側を屈める。縮むイメージがついてしまいます。あまり適していません。

ちなみに、日本語の「股関節」
英語では【Hip joint】『お尻の関節』という意味になります。後ろ側にイメージがあります。
後ろ側へのイメージを強く持つ方がポーズはうまく取れると思います。

このポーズでは身体の後ろ側の筋膜ラインを伸ばします。

足の裏からふくらはぎ、ハムストリングス、仙結節靭帯、脊柱起立筋群、頭部の筋膜まで、伸びて広がります。
理想的な完成形は、膝がまっすぐに伸びて、太ももとお腹がしっかりとくっついて、坐骨が天井の方を向くこと。股関節が完全に屈曲します。

最終的には、特に背骨が入念に伸ばされることになります。
頭の重さで背骨が伸張されることにもなります。

 

ポーズの効果

身体

・脊柱起立筋をストレッチし、背中の凝りを和らげます。

ハムストリングスと膝の後ろ(ハムストリングスと腓腹筋の接合部)を伸ばしストレッチします。
仙結節靭帯を受動的にストレッチして、仙骨の締め付けを解放する効果もあります。

・背骨の柔軟さを向上させるだけでなく、脊椎を刺激し若返らせ、脊髄神経系を活性化します。
その結果、内臓の働きも良くします

・腎臓、肝臓、脾臓など内臓器官を整え強化します。

精神的

・脳機能を安定させるので、興奮しやすい人に適しています。

・頭を下に下げると頸動脈で血圧の高まりを感知。心臓の拍動を落ち着かせ、副交感神経が優位に働くようになり、リラックス していきます。

・落ち込んだとき長めにポーズを続けると、気力が充実してきます。

・意識をスワディシュターナチャクラ(仙骨部のチャクラ)に向けるようにすることで、落ち着きや安心感、安定感を得ることができます。

 

練習プロセス

ウッターナアーサナ

『股関節を完全に屈曲する』というシンプルなポーズですが、体が硬い人にとっては辛いポーズで、気持ち良さを感じません。
体の硬さがつよい人は柔軟になりにくいかと思います。成果が出るまでに時間がかかることを念頭に、焦らず気長に行いましょう。時間をかけて段階的に進めていきます。
無理に行うと腰を痛めてしまいます。

このポーズの一番重要なポイントは、股関節を屈曲させて骨盤を前に傾けること!
骨盤をうまく傾けられるかどうかが鍵です。

 

最初は股関節の柔軟性、安定性を向上させつつ、ハムストリングスと仙結節靭帯の連結部を開いていきます。これには時間をかけて実践します。
膝を伸ばしてハムストリングスをストレッチするのはその後です。

なので、膝を伸ばしたまま行って腰が丸くなるようなら、極端に膝を曲げても構わないので、股関節をしっかりと屈曲させましょう。
背骨を伸ばしたまま、股関節を曲げて臀部を開くようにしましょう。

タダアーサナ

ポーズが終わった後は、立って正中位でお休みする(サマスティヒorプラーナマアーサナ)。
または仰向けでリラックスする(シャバアーサナ)ことをお勧めします。
それは、ポーズの効果が身体になじむこと、バランスを再構築することの助けになります。

ポーズを取った時に緊張した箇所を解放することで、体液が循環し、老廃物を流してくます。
その様子を観察しながらポーズの余韻を感じるようにしましょう。(before  afterを比べてみるのも変化を感じる良い方法です)

 

すべてのポーズに共通していますが、
身体の中心部が変化すれば骨格系全てのバランスが変化することになります。
無理に強く行うことだけが良いことではありません。
ポーズをしている時の微細な変化を捉えることが重要です。

 

 

方法

一つのシンプルなポーズでも、さまざまな筋肉、靭帯が関わってきます。
意識の向け方によって、筋肉の使い方、ストレッチの仕方を変えることができます。
ポーズの初めから終わりまで全てのプロセスに意味を持たせることができるので、自分に適した方法をチョイスしても良いですし、一つのストーリーとして何種類か混ぜて実施することも良いと思います。

①まずは骨盤を傾ける(股関節の軌道)

両手をあげて背骨を引き伸ばします。(最初は骨盤に手を当てて行ってもいい)
背骨を長くまっすぐに保ったまま、骨盤を前傾させます。

最初に骨盤の前傾(股関節の回転運動)を行うようにします。
尾てい骨を後ろへ突き出すイメージです。

このとき注意したいのは腰が丸くなること。最初の軌道(骨盤前傾)がポーズを進める上ですごく重要です。

ポイント
体が硬い人は自分が思っているよりも骨盤を前傾させることができません。
最初はそれでもOKです。
ぜんぜん傾かなくてもいいので、骨盤の前傾(股関節の回転運動)ストップしては戻すことを数回繰り返します。

この運動は主に股関節の構造を支える外旋六筋や腰部の脊柱起立筋を鍛え、仙結節靭帯に刺激を与えます。

 

②ゆっくりと上体を傾ける(遠心性収縮、等尺性収縮)

骨盤を前傾させる動きの延長でからだを傾けていきます。
少し息を吐いてからお腹を引き締めて、腰が反りすぎないように、また丸まりもしないように注意しながら股関節の回転運動を行います。
尾てい骨や坐骨は後方へ突き出ていきます。
膝はロックしないで軽く曲げて行います。

ポイント
重心(臀部)をやや後ろへ引き下げるようにしてバランスをとります。
その時、脊柱起立筋は等尺性収縮、臀部の筋肉(外旋六筋、大臀筋)ハムストリングスは、からだを支えるために働いています。(遠心性収縮をしています)

目標は上半身と床が水平になることですが、その手前の角度で止めても構いません。
動きが止まったら背中を膨らませるように5呼吸します。(または背骨に呼吸を通します)

 

③背骨を少し起こして緩める(伸張反射抑制)

上半身を必要なだけ脱力し、下へ降ろしていきます。
重力で上半身の重みを使って脊柱起立筋、ハムストリングスをストレッチします。

ポイント
伸張反射が起こらないようにゆっくりと倒していくのがポイントです。(伸張反射を抑制できるスピードは1秒間に関節の角度が5度以下と言われているので、けっこうゆっくり
この時も腰が丸まらないように注意しなくてはいけません。

上半身を降ろし、脊柱起立筋、ハムストリングスがストレッチされたら、ほんのわずかに一度緩めて、緊張をゆるめます。再びストレッチすると筋肉がゆるみやすいです。(伸張反射を抑制)
この運動は伸張反射を抑制する他に、収縮の後に弛緩するという腱紡錘のシステムを使うことになり、ストレッチが深まります。

体がかたい人は、、
・背骨の引き伸ばしを保つため、膝を一度必要以上に曲げてから、上半身を降ろして、その後できる分だけ膝を伸ばしても良いです。
・または床に手をついて上半身の重さを軽減して、腰の負担を軽くするのも最初は良いです。
・テーブルやブロックを使って体を支えながら行うのも筋肉がゆるみやすいのでおすすめ。

 

④踵を少し持ち上げて、下ろしてから前屈する(腱紡錘の作用)

前屈の格好のまま、床に手をついて(指先をカップのようにする)上半身の重さを支えてバランスを取ります。

ふくらはぎの筋肉を収縮させて、踵を持ち上げます。
持ち上げるのはわずかでもいいし、高くあげても良いです。3秒程度キープ。
このとき、足の裏、脛骨の後ろ側の筋肉(腓腹筋。ヒラメ筋、後脛骨筋や足底腱膜、足趾の屈筋)が収縮し緊張するの感じます。

踵を床に降ろして体重を乗せてリラックしてバランスを取り直し、股関節の回転を意識して、前屈をほんのわずかに深めます。
(収縮の後の弛緩は、腱紡錘(ゴルジ腱器官)の反射作用で筋肉がゆるみます)

ポイント
・収縮はわずかでも十分効果があります。
・何回行っても良いですが、5回を目安に少しずつ前屈が深まるのを感じてみます。

慣れてきたら、、

脊柱起立筋を収縮させて、背骨をわずかに反らせてから、ゆるめて前屈を深めます。
これも同じ反射作用を使います。

 

 ⑤ハムストリングス、仙結節靭帯の広がりを待つ(ストレッチ)

深まった位置で前屈をキープします。
手は床についていてもOK。
股関節の後ろ(臀部)に意識を向けて、仙結節靭帯とハムストリングスの連結部と外旋六筋をストレッチします。
靭帯や拘縮した筋肉は変化に時間がかかるため、30秒くらい行うほうが効果的。

ポイント
本当に柔軟にするためには、90秒以上ポーズをキープします。
靭帯などかたい組織がやわらかくなり始めます。慣れてきたらチャレンジ。

 

⑥太ももの筋肉を収縮させる(相反抑制)

ポーズが最終域に達したら、太もも(大腿四頭筋)と腸腰筋を収縮させます。
体の前側の筋肉で股関節の屈曲をキープします。

これには二つの効果があります。
1、一つは筋肉が最終域で収縮するという筋力の訓練
2、一つは相反抑制というシステムによって起こる、収縮させた側の反対(太ももの裏、背中側)の筋肉が弛緩するという効果
この二つによって、よりポーズが深まります。
これも30秒くらいキープします。

 

⑦足首か持てるところをつかんで抱え込む(ストレッチ)

手で足首を掴む、もしくはふくらはぎを抱えて、さらに股関節を強く屈曲します。
肩甲骨は首の方ではなく、腰の方へ少しスライドするように緊張を作ると、背骨が必要以上に丸まらずに綺麗にポーズがとれます。

 

⑧意識を下腹部に集中する(メディテーション)

ポーズが完成したら意識をスワディッシュターナチャクラに集中します。

 

⑨背骨を下の方から順番にロールアップ(床反力の利用、深部筋の連動)

膝を大きく曲げて背骨を丸くして、足の裏で床を押しながら膝を伸ばして行きます。
その時、背骨を下の方から一つ一つ丁寧に起こしてロールアップしていきます。
ゆっくりと上体を起こしたら、一度伸びをして、胸の前で手を合わせ正中位に戻ります。(プラーナマアーサナ)

 

※ 禁忌(してはいけない人)

背中に疾患のある方は大きく前屈をしない。

 

まとめ

すごくシンプルなポーズですが、効果が現れるまで時間がかかるかもしれません。
いつでもどこでもできるポーズでもあるので、丁寧に、頻度を多く実践することをお勧めします。

ハムストリングスの特徴として、伸びにくい場合は収縮もしにくくなっている可能性が高いです。ハムストリングスの筋力訓練と一緒に練習すると効果がアップしますので、試してみてください。