【股関節の外旋運動で、最も強い筋肉のトレーニング方法】
内閉鎖筋の特徴と作用
内閉鎖筋とは
内閉鎖筋は外旋六筋の一つです。
股関節外旋の主動作筋。大腿方形筋と並んで、外旋に働く作用が最も強力な筋肉です。
英語では【obturator internus muscle】
obturator=閉鎖孔
internus=内部の
という意味です。
特徴
内閉鎖筋は平らな扇型の筋肉です。
閉鎖孔と呼ばれる孔の内側から伸びているのが特徴のひとつ。
股関節を外旋させるときに最も大きな力を発揮します。
筋肉の大きさは大腿方形筋の半分以下、梨状筋よりも小さいのですが、外旋の作用はとても強いです。
その理由として、筋肉の付着の仕方があります。
内閉鎖筋は、恥骨と坐骨の内面から始まって、坐骨の部分(坐骨棘と坐骨結節の間)で90度カーブして股関節に向かうので、筋肉自体でテコの原理が働きます。大きさの割に強い力を発揮することができます。
内閉鎖筋は上双子筋、下双子筋の間にあります。3つの筋肉は共同の腱になって大転子に付着するため、まとめて三頭円筋とも呼ばれます。
起始と停止
起始 ー 閉鎖膜とそれを縁どる恥骨と坐骨の内面(閉鎖孔辺縁)
停止 ー 大腿骨の大転子内側面(転子窩)
働き
① 股関節外旋
② 股関節の安定と制御
③ 歩行やスポーツで体の向きを変えるときに軸足の運動で働く
④ 平泳ぎの足の動き
神経支配
内閉鎖筋神経(仙骨神経叢の枝) ー L5,S1
内閉鎖筋の作用
内閉鎖筋は外旋の作用が最も強くて、伸展と内転の作用もわずかにあります。
しかし、解剖学的肢位で等尺性収縮を測定すると、
股関節伸展で最も筋肉の活動が高いんです。
次に外旋運動で活動が高く測定されます。
そして、内転よりも外転の時に筋活動が高いそうです。
この筋肉活動の結果から、運動よりも関節の安定や制御のために作用していることが考えられます。
また、股関節外旋運動で力が入っていない状態から、少しずつ力を入れ始める時、
梨状筋や大腿方形筋よりも内閉鎖筋の方が先に活動を始める傾向にあります。
● 股関節外旋の作用
内閉鎖筋は股関節を外旋させるための最も強い筋肉。
上双子筋、下双子筋がこれをサポートします。
● 股関節の安定と制御
全く力を入れていない状態から運動を始める時に、先行して収縮が始まる筋肉。
それは関節の安定や制御に関わる作用が大きいことを意味しています。
また、内転方向に運動を起こす筋肉の走行であるにも関わらず、外転の時に筋肉の活動が高いのも特徴です。骨頭を臼蓋に引きつけて安定させ、運動を制御する作用があることがわかります。
● 歩行やスポーツで体の向きを変えるための軸足の動き
方向転換で身体の向きを変える時、動作としても制御としても働く重要な作用があります。
外旋六筋はそのような時に大活躍します。
● 平泳ぎの足の動き
内閉鎖筋の作用を象徴するような運動です。
内閉鎖筋の筋力トレーニング
内閉鎖筋は外旋運動で他の筋肉よりも先に収縮が始まる傾向にあります。
ピンポイントで鍛えるなら運動のはじめに収縮を感じれば、その時点でトレーニングになっています。
やさしく外旋させる運動
① 横向きになって寝ます。
下になっている方の足の上に、反対の足を揃えてセットします。
② つま先を上に向けるように股関節を外旋します。
そのあと緩めて戻します。
*ゆっくりと、小さい運動から始めて、内閉鎖筋を狙って運動しましょう。
③ 下側の足のつま先を伸ばして、上に乗せた足のつま先が床の方を向くスペースを作ります。
④ 内旋の位置から股関節外旋運動を行います。
股関節内転から外旋する運動
① 片足の股関節を曲げて膝を立てて、その上に足をクロスして置きます。
② 上のクロスした足で引っ張って、下側の足を内転、内旋させます。
③ 下側の足の股関節(内閉鎖筋)で、クロスした足を押し返して筋肉の収縮をさせます。
内閉鎖筋は始めの方から収縮するので、ゆっくりと小さい運動から始めます。
内閉鎖筋のストレッチ
内閉鎖筋は股関節屈曲と内転でストレッチされやすいです。
股関節屈曲と内転ストレッチ(パターン1)
①片足の股関節を曲げて膝を立てて、その上に足をクロスして置きます。
②上のクロスした足で引っ張って、下側の足を内転、内旋させます。
股関節屈曲と内転ストレッチ(パターン2)
①仰向けで寝て、右足の股関節を曲げ、膝を抱えます。
②右足を左肩の方向に引き寄せてお尻の奥をストレッチします。
鳩のポーズのバリエーション
①片足を前に出して、スネを横に倒して置きます。反対側の足は後ろに伸ばして置きます。
②前側に出している足の太ももの方向に向かって、股関節を屈曲させていきます。
(太ももよりも少し外側に上体を倒していくつもりで、屈んで行きます)
運動のコツ
内閉鎖筋の筋力トレー二ングはやさしく、微細に、時間をかけて行うのがコツです。
特に運動のし始めは、大きく動かすよりも意識を向ける方が重要です。