僕はヨガインストラクターでもあり、ヨガスタジオで解剖学を教えています。
すごくがんばって(力ずくで)ヨガのポーズをとっている人が多すぎかな?って思います。
その結果、からだを壊してしまったり、深い部分に届きません。
「何よりも避けてほしいことは、力ずくでポーズをとったり、無理して現在の自分の能力を超えることをしてからだを痛めてしまうことです。筋肉のストレッチもポーズの上達も、筋肉がリラックスしている時にのみ可能なのです。」
シヴァナンダ・ヨーガ『ヨーガ 本質と実践』引用
大事なことが2つ書かれています。
『無理をしすぎるとからだを痛めてしまう』
『筋肉がリラックスしているときにポーズが上達する』
逆に思っている人もいますよね。
「がんばらないとポーズができるようにならない」
「からだを強くすることで痛みが治る」
そう思っていると、からだを痛めてしまいます。
今回は、がんばらない筋トレの原理『サイズの原理』をご紹介します。
ちょうどいい筋肉のコントロールと、リラックスしながら動ける筋肉の仕組みです。
『サイズの原理』を知って、コツコツと練習を続ければ、力まずに動くことができるようになります。
体だけではなく心のコントロール(徐々にゆるむこと)も自然にできるようになれますよ。
簡単な練習方法と、「なぜそのやり方なのか?」もご紹介します。
ヨガは自分自身をコントロールすること
ヨガの大きな目的は、『自分自身をコントロールすること』
アーサナ(ポーズ)をとおして、体を自由自在にコントロールします。緊張もリラックスも両方自由自在に!
体を痛めてしまう人の多くは、コントロールできずに体を暴走させています。制御できていないんですね。いつもパワーで運動をしてしまう。
パワーや強さでなんとかしようとするとからだを痛めやすいのです。
安全な順番は、
「コントロール」を覚えて、
その後必要であれば「パワー」をつける
という順番。
本当にガチガチだったところが意識しやすくなって、ストレッチの効果もアップします。
ヨガで力をコントロールする
筋肉はいつも100%の力を発揮しているわけではありません。
必要がなければ50%、30%、20%・・・・。限りなく細分化できます。
これが力のコントロール!
ヨガは、
「自分の意思で力加減をコントロールすること」
「その加減に気づくこと」
これが筋トレとの大きな違いです。
ヨガのポーズは筋肉を働かせますが、筋トレとは目的がちがいます!
『パワーをつけよう』 → どんどん力を強くする。
『コントロールしよう』 → MAXの力を増強するのではなく、より適切な力加減で動ける。
結果として、動いても疲れにくい、しなやかで楽に動けるノーストレスな体になっていきます。リラックスしながら動けるようになるんです。
ヨガは、自分で自分のからだを癒すようなもの!
筋肉のコントロール【サイズの原理】
筋肉は必要な力加減がコントロールされています。それを『サイズの原理』といいます。
もしも筋肉がONとOFF(収縮と弛緩)だったとしたら、カチンコチンの動きになってしまいます。そして、動くたびに100%の力を使っていたらすぐに疲れてしまう。
日常生活では10%とか20%くらいの加減でコントロールされているのが自然なこと。
この力の加減にも上手い下手があって、運動神経がいい人悪い人、疲れやすい人疲れにくい人がでてくる要因の一つになります。
ヨガではそれをコントロールする練習をするんですね。
サイズの原理とは
筋肉は働くときに 10⇄20⇄30% ときには100%と必要な力を調整していますが、どうやってしているのでしょうか?
この調整は、筋肉の線維がどれくらいの量(数)働いているのか?によります。
量が多いと強い力、少ないと弱い力。
自然な動きは、弱い力から強い力にシフトしていく順番です。
(余分な力は使わない。エネルギーを節約する仕組み)
徐々に力を強くしていくと、順番に線維の束を追加してパワーを強くしていきます。
ヨガは力ずくではなく、この筋肉の器用さを作っていきます。
「サイズの小さなほうから働く原理」という意味で、『サイズの原理』と呼ばれています。
サイズの原理メリット
サイズの原理がきちんと働いて運動できるようになると、すごくいいことがあります。
- 疲れにくくなる
必要なぶんだけ適切な力が使えるようになるとエネルギーの節約になります。いつも効率がいい動きができるようになります。 - しなやかに動けるようになる
筋線維は筋膜で包まれているので、その線維同士が円滑に滑るようになります。それがしなやかな動きにつながります。(こころの解放にもなるんですよ) - 関節が安定する
サイズの小さな筋線維は、関節を安定させてくれます。安定してから強い力を使った運動ができると怪我をしにくいです。
力のコントロールを練習にとりいれてみて!
ヨガのポーズアーサナ。
アーサナは『姿勢』を意味します。快適な姿勢、楽な姿勢を作るためにします。
ヨガは、速く動くための練習ではないし、力をつけるという練習でもありません。
とはいっても、『速く動くこと』や『力を発揮するときにからだを安定させるベース』になるので、どんな人にも練習は適しています。
練習のコツ
練習にはちょっとしたコツがあります。
- 小さな収縮も大事にする
これが一番大切。動きはじめへの気づき、小さな収縮を意識できるようになることです。だんだん体のコントロールが上達します。
ゆっくりとわずかな収縮を見つめるような気持ちで行います。 - 呼吸を止めない
力みすぎず、やさしい呼吸を続けながら、交感神経が過剰になるのを抑えて実践します。大きく呼吸する意識も緊張になるので注意。 - 丁寧にゆっくりと動く
ゆっくりと行うことで『サイズの原理』がはたらきやすくなります。
ポーズを連続して行うときも「つなぎの動き」をゆっくりと丁寧におこないます。滑らかできれいな動きがみにつきます。 - 必要以上に力まない
力んで動くのではなく、動いている体の感覚に気づくこと、感じることを優先します。
人は硬くなっていて、ゆるみながら動くことをけっこう忘れているものです。力みを手離すことの方が難しいですよ。
動きはじめにも意識を向けること。
小さな筋線維の束から順番に働くことを知っていれば、小さな動きも意味のあることだと認識できます。
サイズの原理は『しなやかさ 』『軽さ』『楽さ』が身につきます。パフォーマンスの向上になります。
はじめに起こる小さな収縮が関節を安定させてくれるので体にもやさしい。怪我も予防できます。
ポーズを実践
ウッターナアーサナ(前屈のポーズ)で背骨をコントロール
ウッターナアーサナ⇄ハスタ・ウッターナアーサナで脊柱起立筋を感じてみましょう。
- ウッターナアーサナをします。背中を丸めすぎないように股関節から屈曲。ポーズは普段よりも浅くとります。
テーブルやブロックに手をおいて、背中の力が抜けやすいようにセッティングします。 - アルダ・ウッターナアーサナをします。
股関節の屈曲は保ったまま、背中をほんのわずかに伸ばそうと意識を向けます。胸椎や腰椎の後ろで脊柱起立筋がやさしく繊細に収縮するように練習します。 - 力いっぱいまではいかせません。わずかに収縮を感じたら再びウッターナアーサナ。
この運動を繰り返します。
マージャリーアーサナ(猫のポーズ)
背骨のしなやかさ を感じてみましょう。
- よつばいになります。手や足は支えるだけに必要な最小限の力でからだを支えます。
- 背骨に意識を向けて、吐く息で背骨を丸めて、吸う息で背骨を反らせます。
- 動く方向だけ意識をして無理に大きくは行いません。蛇のようにしなやかになるように練習します。
不調もコントロールできるよ!
筋肉は、自分で収縮させたることもできるし、リラックスしてゆるめることもできます。
どんどんコントロールが上達していきます。
実はこれを繰り返していると、からだは勝手にいい位置に収まってきます。
そういう仕組みになっているんです。
からだがいい位置に保てるようになると、腰痛や肩こりになりにくくて痛みや不調のないからだになっていきます。
わかりやすくて、見える化しやすくい筋肉。ヨガで一番はじめやすいのは筋肉をうまくコントロールすることです。
意識してみてください。
イラスト付きでサイズの原理を学んでみて→