短腓骨筋とは
短腓骨筋は脛の外側にあります。
長腓骨筋、第3腓骨筋と共に足部を外反させる筋肉です。
長腓骨筋とは、停止する位置が違うだけで、ほとんど同じような走行をしています。
サーフィンやスケートボードでは、よりアクティブに使う筋肉です。
短腓骨筋も筋力が低下すると、足首が内反しやすくなって、捻挫する可能性が高くなります。
足首の捻挫が多い人は、靭帯が損傷していたり、伸びてしまって機能不全になっていることが多いので、外反する作用の筋肉(長腓骨筋や短腓骨筋)を鍛えて、補強する必要があります。
歩いたり、走ったりする時に大事な筋肉で、特に道路がデコボコしている時にはバランスを取るために重要な働きをします。
トレイルランニングなどする際は、足首の安定、微調整のためにしっかりと鍛えたい筋肉。
長腓骨筋と同様に、短腓骨筋も、最初は脛の前側にある筋肉でした。
足首の筋肉は内くるぶしの後ろを通過する筋肉が多くて、内反する力が強いくなりやすい。偏りがち。外反に作用する力も必要だったんです。
そこで前側にある筋肉をシフトさせて、腓骨筋にしました。
2次的に生じた筋肉なんです。
(本来は肉食動物で見られるように、腓骨筋は外果の前側に位置していました。シフトしたことで底屈に作用することになりました。)
進化の中では比較的新しくシフトした筋肉なので、どうしても内反よりも力が弱いです。足首が内反しやすいのはそのため。捻挫にはくれぐれも注意が必要です!
英語では【fibularis brevis muscle】
fibularis=腓骨の
brevis=短い
という意味です。
短腓骨筋の特徴
短腓骨筋は足を底屈、外反させる筋肉です。(これは長腓骨筋と同じ)
底屈運動の際は後脛骨筋や、下腿三頭筋と共同で働きます。その時は前脛骨筋が拮抗筋になります。
外反運動をする際は、内反する作用の後脛骨筋、前脛骨筋が拮抗筋になります。
下腿では全面、後面、側面の筋肉がバランスをとりながら細かく動きを調整していることがわかります。
特に前脛骨筋とは真逆の作用になるのが特徴で、どんな動きでも拮抗する関係にあります。
長腓骨筋よりも短いですが、羽状筋という広がった筋肉の形をしているのも特徴の1つ。
支えとしてバランス調整する形をしています。
線維には赤筋線維が多いことからも、運動の制御や微調整、身体を支持するために働いていることがわかります。
短腓骨筋特有の特徴は外側縦アーチを強くすることです。
第5中足骨へ付着して、外側縦アーチを強く維持します。そうすると立方骨の位置を高く保てるので、足の裏の筋肉が働きやすい環境を作ることができます。
特に立方骨の下を通る長腓骨筋の腱溝のスペースを保ち、長腓骨筋がより働きやすい環境を作ります。
どちらかといえば、短腓骨筋は『外反』の作用、長腓骨筋は『つま先の向きを調整する』という役割にあります。
起始と停止
起始:腓骨外側面(長腓骨筋よりも下位)
停止:第5中足骨の粗面
神経支配
浅腓骨神経 ー L4ーS1
短腓骨筋の作用
短腓骨筋の作用は、足部の『底屈』『外反』の動き。それと主に外側縦アーチ形成に大きく貢献。
歩行の時は、『脛を支える制御』『推進力と蹴り出すための力』『足底のアーチを安定』に働く多彩な役割。
①足首の底屈
②足部の外反
③外側縦アーチ形成に大きく貢献
④歩行時にバランスを取るために作用する
短腓骨筋の作用
足首の『底屈作用』
短腓骨筋は足首の底屈運動を補助します。
つま先立ちをする際は、小指側を外側に蹴りだすように力を伝えます。(サーフィンで使う運動)
反対に足首を固定する時は脛が前に倒れるのを支えます。
歩行では、片足で体重を支えるときに下腿が前に倒れるのを制御しています。
足の小指側を挙げる:外反(回内)
短腓骨筋は、足首の外反運動をさせます。
停止部が第5中足骨にあるので、小指側を外側に引っ張って外反させます。
サーフィンで板を操作する際や、スケートボードのオーリーで板を蹴り上げる時によく働く筋肉です。
本来は羽状筋であり、遅筋線維が多いのですが、瞬間的な収縮をするように働かせています。
足部の外側縦アーチに作用する
第5中足骨の底部に付着する短腓骨筋。
第5中足骨と立方骨との間を圧縮する力があります。
その力が外側縦アーチの安定に作用します。
小指側での推進力を作っています。
歩行の時に足部の運動を制御する
足部の底屈に作用する短腓骨筋。
歩行の時は立脚期(片足で支えている時)の途中から、脛が前に倒れていくのを制御します。
内側では後脛骨筋が、外側では長腓骨筋、短腓骨筋が遠心性収縮をして、脛が倒れていくのを制御します。
長腓骨筋は第一趾列の底屈で、短腓骨筋は第5中足骨と立方骨と踵骨の間に圧縮力を加えて外側縦アーチを安定させて、踵が接地した後の推進力の準備としてエネルギーを蓄えます。
歩行の時、最終的に親指で地面を蹴り出すのですが、この時に、踵から母趾側への重心移動を誘導します。(外側から内側へのアシスト)
短腓骨筋の筋力トレーニング
人の足は内反の方が強くなりがちなので、いろいろな関節の角度や使い方で腓骨筋は鍛えたい筋肉。
強度、関節の角度など工夫しましょう。
そもそも内反傾向にある足首なので、ストレッチで伸ばすよりも筋トレがメインになるかと思います。
初めて運動する時は低負荷から始めることがオススメです。
外反運動エクササイズ
1、椅子に腰掛けます。
2、片方の足を床から離して膝を伸ばし、脛の外側を意識して、つま先を伸ばす方向と足小指側を外側に返す方向に動かします。
3、左右両方行います。
4、膝の伸ばす角度を変えながら、同じように実施します。
座って底屈・外反運動
1、椅子に腰掛けます
2、床に足底をつけて、小指側で床を押しながら踵を持ち上げます。底屈しながら、外反は小指で押す感じ。
3、左右両方行います。
4、足の位置を前後左右に移動させて、同じように実施します。
立って底屈・外反運動
1、立って小指で押すようにつま先立ちをします。
2、数回繰り返したら、足の位置を前後左右に動かして同じように実施してみます。
*バランスを崩さないように注意する。できればすぐに安定したものに掴まれると安心。
セラバンドを利用した方法
1、椅子に腰掛けるか、床に足の伸ばして座ります。
2、なるべく広い面を使って、小指側にセラバンドをかけます。かけた足と反対側の手でセラバンドを持って、横方向に引っ張ります。
3、小指側でセラバンドを底屈・外反方向に運動します。
*セラバンドを使うメリットがあって、背屈位から運動がしやすいことと、低負荷から始められるということです。セラバンドがある場合は最初にするのが、その後の効果アップにつながります。
ランニング、ウォーキング
トレーニングをした後に、ランニングかウォーキングを行います。
短腓骨筋が活性化されている状態で、トレーニング効果を身体に馴染ませるために役立ちます。
つま先立ち
ランニングやウォーキングができない場合は、身体に馴染めせてバランスを取るために、数回普通につま先立ちをします。
腓骨筋のトレーニング後はどのような感覚なのか、before、afterで比べてみましょう。
短腓骨筋のストレッチ
椅子に座ってストレッチ
1、椅子に腰掛けます
2、片方の足をもう片方の足にかけて、脛と足の小指側を手で持ちます。
3、底屈、内反方向に手で足部を動かしてストレッチ
*できれば30秒以上行います。
運動のコツ
短腓骨筋は足の外側にある筋肉で、あまり意識をしたことがないかもしれません。
最初は『方向性』『収縮しているのを感じる』ということを意識して行ってみます。強さはその後。
遅筋線維が比較的多い筋肉なので、微細な収縮運動から始めるだけでも十分訓練として成り立ちます。
サーフィンやスケートボードのためにトレーニングする際は、速い収縮運動で行うと効果的です。
短腓骨筋の運動後は、少し足踏みやつま先立ち、できればウォーキングなどをして、微妙なバランスの変化を身体に馴染ませます。
まとめ
足は内反方向に返りやすくて、捻挫のほとんどは内側に捻ることで起こります。
捻挫の予防のためにも鍛えたい筋肉です。
特に捻挫を何度も繰り返してしまっている人は、低負荷からゆっくりと運動を始めて、バランスの取り直しを丁寧に行ってみてください。
トレーニングは地味ですが、作用は重要な筋肉。
忍耐強く実践しましょう。