腰の深層筋【腸腰筋】とは
『美しいボディーライン』『キレイな姿勢』『上半身と下半身が連動したスムーズな運動』に欠かせない働きをするのが『腸腰筋』
股関節、骨盤、腰にまたがる筋肉で、体の表面からは見えない『深層筋(インナーマッスル)』です。
腸腰筋がうまく働くようになるとスタイルが綺麗になるだけでなく、疲れにくくなったり、肩こりや腰痛から解放されたり、運動するときのパフォーマンスが向上したり、とってもいいことづくし。
ただ残念なことに、この筋肉をうまく使えていない人も多いです。
腸腰筋とはどこにある筋肉なのでしょうか?
どこにあるのかを理解することで、トレーニングするときの意識の仕方が変わってきます。
今回は、まず腸腰筋の場所や作用を知ってみましょう。
腸腰筋はどこにある?
腸腰筋は、人間の体の中心に位置して、上半身と下半身をつなぐ筋肉です。
横から見るとお腹と腰の間にあります。
前から見ると、股関節の付け根、骨盤、腰椎に付着します。
腸腰筋は、骨格の前側にあるので、股関節を屈曲方向に動かします。
でも身体の表面にあるわけではありません。
表面は腹筋群があります。
そして、その裏側に内蔵があります。
腸腰筋は、さらに奥にあり、骨盤、腰椎があります。
位置を表す表現では『後腹壁』または『深腹筋』と呼ばれることもあります。
この『後腹壁』の位置を感じることが、トレーニングではポイントになります。
腸腰筋は、『腸骨筋』『大腰筋』『小腰筋』の3つの筋肉の総称です。
でも、そのうち小腰筋はない人もいます。
なので、重要なのは、腸骨筋と大腰筋の2つ。
身体の他の部分にインナーマッスルは、サイズが小さくて大きな力を発揮する筋肉ではないです。
腸骨筋、大腰筋は、明らかにインナーマッスルですが、大きな断面積を持つ筋肉。
骨盤、腰椎の運動軸近くに付着しているので、トルク(力の回転モーメント)は小さいという特徴的な筋肉でもあります。
これが意味するのはインナーマッスルとしての働きをしながらも、とても強靭な力を発揮できるということ。
外国人はこの腸腰筋が大きくて、日本人の2〜3倍あるとの報告もあります。
骨盤が前傾しヒップが上がっていたり、歩く姿勢が格好良く見えるのは、腸腰筋が発達していることが要因として挙げられます。
腸腰筋は3つの筋肉からできている
『腸骨筋』『大腰筋』『小腰筋』の特徴
腸骨筋
英語でiliacus(iliac=腸骨)と呼ばれます。
腸骨から大腿骨の付け根に付着、股関節を曲げる深層筋です。
「股関節だけ」をまたいでいる1関節筋になります。(仙腸関節には関わります)
腸骨筋は股関節屈曲の作用が主な役割。
横へ動かすことや、股関節を回転させる作用はほとんどありません。
股関節屈曲運動や、座ったときに骨盤を前傾させる運動で働きます。
屈曲させる運動なので、筋肉自体も身体の前側にあるイメージかもしれません。
でも、腸骨のすぐ前側にくっついているので、思っているよりも後ろ側に位置しています。
大腰筋
大腰筋は上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉です。
英語でpsoas major(psoa=腰の筋)と言います。
腰の筋肉といえば、この筋肉。
『腰』という漢字は、この筋肉をよく表しています。
月偏は肉月を意味して、元々は『肉体』を表します。
肉体の『要』と書いて『腰』という字になります。
それくらい人の体にとって重要な筋肉ということ。
大腰筋は腰椎の側面から起こり、大腿の付け根に付着します。
股関節の屈曲筋として、腸骨筋と共に最も強力な筋肉です。
そして、歩行や正しい姿勢を保つために重要な役割を果たします。
第12胸椎から始まり、腰椎5個すべてに付着し、腸骨筋と合して、大腿骨小転子に付着。
たくさんの関節をまたぐので、腰の機能にとても大きく関与します。
股関節の屈曲、腰椎の安定のために働いていて、『運動』と『安定』両方を担う器用な筋肉でもあります。
特に、立位では『動き』よりも『安定』や『姿勢の調整』に作用します。
大腰筋が収縮すると、腰椎がきちんとはまるように圧迫し、腰椎を安定させます。
歩行くらいの強度では、安定と姿勢調整作用の方が優位かもしれません。
でも、ランニングなど、太ももを高く上げるような時は『動き(股関節の屈曲)』に大きく貢献します。
さらに、大腰筋は腰椎の側方に位置するため、わずかですが、腰椎を側屈させる働きもします。
小腰筋
この小腰筋はあまり大きな役割はありません。
大腰筋から分離した束で、筋肉自体が欠如することもあります。
約半分の人にしかないと言われている、特殊な筋肉です。
第12胸椎、第1腰椎の側面から、腸恥隆起に付着するので、股関節を屈曲するためには働きません。
股関節を屈曲するためのサポートとして、腰椎を若干屈曲する程度。
腸腰筋の役割と作用
腸腰筋は股関節を屈曲させる作用があります。
腸骨筋と大腰筋は、股関節屈曲を一緒になって行います。
すごくうまく連携していて、歩くときに股関節を曲げて足を前に出す(運動)と、腰を安定させること(支え)の両方を同時に担っています。
人の体の中でも特に大事な筋肉。
『体の中心の奥深くに、体の中で一番大事な筋肉が隠れている』と言っても、言い過ぎではないかも。
腸腰筋の役割と作用は大きく5つ。
身体を支える役割
大腿骨、腸骨(骨盤)、腰椎にまたがる腸腰筋は、人の体の中心の深層筋です。
立っている姿勢の場合は、大腿骨の上に乗る骨盤を安定させます。
そして、安定した骨盤の上に乗る腰椎を支えて安定させます。
腰は人の身体の要の部分。
姿勢全体を支えます。
上半身と下半身をつなぐ役割
腸腰筋の中でも大腰筋は上半身と下半身にまたがる深層筋です。
人体で唯一。
特に歩行やランニングでは片側が支えとして、反対側は運動として連動します。支えと運動を微細にコントロールしながら両立させます。
上半身と下半身の動きを連動させるための役割を果たします。
股関節の運動(屈曲の作用)
腸腰筋は、股関節を屈曲する主の筋肉です。
歩くくらいでは、それほど強く収縮しませんが、階段を昇る時や走る時のような強く働きます。
反対に後ろ側に蹴り出すような運動ではしっかりと伸びる必要もあります。
萎縮していては股関節を後ろに振り出すのを邪魔してしまいます。
強さとしなやかさが必要です。
腰椎の運動(側屈、屈曲伸展の作用)
腸腰筋の中で大腰筋は、腰椎を支えもするのですが、動きにも大きく関わります。
腰椎の横側に付く筋肉なので、横に倒す働き(側屈)に作用します。
また、湾曲の仕方にもよるのですが、腰椎下部は屈曲方向に、腰椎上部は伸展方向にわずかに作用します。
湾曲の仕方によって、屈曲伸展の方向性が変化するのが面白いところです。
これは微妙な位置関係を調整し、動きながらも基本的には安定を図っているといえます。
骨盤の前傾
立っている時、座っている時、大腿部を固定していれば、骨盤を前に傾けてくること(前傾)に作用します。
股関節を屈曲することと同じ動きなのですが、足を固定した時は骨盤が前傾する動きになります。
腸腰筋の整え方 3つの方法
- 筋力トレーニング
インナーマッスルであり、機能していない人も多い筋肉なので、最初は低負荷の運動から始めて、どんどん強度を上げていくことがオススメです。
腸腰筋が働くようになったらスクワットも効果的。 - ストレッチ
股関節を伸展することでストレッチできます。
腸腰筋の位置は横から見て中心にあります。体の前側を伸ばすのとは少し感覚が違うので、正しい場所をイメージしましょう。 - ウォーキング、ランニング
ただ歩くのではなくて、腰の中心がどう動いているのかを意識しながら行いましょう。